染谷悠子

「土や星や」

楽園 2026 Chinese ink, water color on paper 202.0 x 400.0 cm ©Yuko Someya

この度小山登美夫ギャラリー京橋では、染谷悠子展「土や星や」を開催いたします。
本展は作家にとって6回目、2年ぶりの個展となり、新作を中心に発表いたします。

【本展および出展作に関してー土や星、谷での生活】

近年、染谷悠子は制作拠点を岡山に移しました。「日置谷」と呼ばれるその土地には、「山あいにお日様を置く」という意味があるといいます。その山や谷、そして地表を覆う土の中で生活し、制作した作品を、今回、展示いたします。

これまで染谷は、身近な風景を、自身の幼少期の思い出、生活の変化から感じ取った死や生、出産、自然など生命の根本とからめて捉え、独自で新たな表現をしてきました。様々な動植物が混在する幻想的な染谷の作品は、現代の花鳥画ともいえるいきいきしたものでしたが、本展で発表される新作は、そうしたこれまでの表現を踏まえながらも、作家自身の想像をはるかに超えた自然との関わりのなかから生まれたものになってます。

「畑をはじめてから、空をたくさん気にしたり、土の中や土の外のあらゆる生き物達との距離がグッと縮まり
同時にグググッっと離される様な気持ちにもなります。
これは、星夜を見る時、宇宙を覗く時と似ているなぁと感じるようになりました。
すぐそこにあって見えているのに知りたいものは何も見えない。
どこに点を置けばいいのかも、いまはまだ全然わからない、いつも迷子です。
土の中にも宇宙的多次元が展開されている、そんな風に思いはじめました。」

そんな土と共に生きて、染谷は
「土での出来事は、星が私達の目に到達している事と通ずる何かがあるんじゃないかなぁ」
と想像し始めたと言います。

また、今回出品される大作2点について、作家は以下のコメントを寄せています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『楽園』2026年、202 x 400 cm, 紙に墨、水彩
草むらで四つ足が死んでいた。
四つ足の身体を覆う様に無数のウジがわきうごめくすぐそばで、新しい緑が溢れ吹き出している様子や、
次の土のために、まだ瑞々しい草花が刈られ投げられていたまわりを、蝶々達が音もなく浮かぶ
そこの場所は、とても美しかったのに、強烈な屍臭によりすぐに立ち去るしかなかった。

『美星町』2026年、230 x 420 cm, 紙に墨、水彩
夜の闇を大切にしている美星町で
星空やその奥にある宇宙を覗いていると
人そのものから解放されて、ただ無心の美が出てくるように思う。
その時、すごくこわいなとも思う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

自然と共に生活するなかで、鋭い感性によって生まれてきた確かなリアリティ。それを作品として成立させようとするアーティストの真摯な姿が見えてきます。そのような染谷の今回のチャレンジをぜひご高覧ください。

【制作方法の変化】

これまで染谷は、設計図とも呼べるような緻密な下絵をもとに、和紙にトレースして着彩した大小のパーツをキャンバス上で組み合わせ、何層にも重ねながら画面を構築し、さらに鉛筆や墨による描画を加えることで作品を完成させていました。

染谷が長年向き合ってきた和紙という素材は、扱いも描画も難しい反面、だからこそ面白く、夢中になれる素材だといいます。今回の新作では、設計図的な下絵を用いず、従来のキャンバス上での構成作業からも離れ、和紙そのものを支持体としています。これにより、これまでキャンバスに貼ることで伸ばされ失われていた紙のしわやうねりといった表情が、そのまま作品の中に生かされています。

制作方法の転換は、そのスケールにも大きな影響を与えました。キャンバスの形や大きさの制約から解放されたことで、作品はアトリエ空間を埋め尽くすような大型のものへと発展し、土や星々、樹木といったモチーフが、より自在でのびやかに画面上へと展開されています。自身にとって過去最大となる大作を完成させた経験は、描くという行為をより自由に捉える契機となり、21年ぶりのペインティング制作へとつながりました。

こうした変化の背景には、移住後の環境もあるでしょう。ひとたび扉を開ければ山や田んぼが広がる自然豊かな環境は、作家に新たな余白をもたらしました。緊張感を伴う丹念な構築を重ねてきたこれまでの経験を礎としながらも、制作を厳密にコントロールする意識から少しずつ解放され、表現はより柔軟で開かれたものへと広がっています。今回の新作には、そうした内面的な変容と呼応するように、空間的な広がりとおおらかさが表れているといえるでしょう。

【染谷悠子について】

染谷悠子は1980年千葉県生まれ。2004年東京造形大学美術学科絵画専攻卒業、2006年東京藝術大学大学院版画専攻修了。2004年町田市立国際版画美術館の全国大学版画展で、収蔵賞/観客賞を受賞し、作品が収蔵されました。主な個展に「野花の中にあなたを見る」(小山登美夫ギャラリー天王洲、東京、2024年)、「Yuko Someya」(Richard Heller Gallery、サンタモニカ、2014年)、主なグループ展に「生きとし生けるもの」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、静岡、2016年)があります。2004年町田市立国際版画美術館、全国大学版画展、収蔵賞/観客賞、2014年「VOCA展 2014 現代美術の展望 -新しい平面の作家たち-」佳作賞受賞。

—————————————————————————————–
プレスに関するお問い合わせ先:
Email: press@tomiokoyamagallery.com
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
————————————————————————————––

  • 美星町 2026 Chinese ink, water color on paper 230.0 x 420.0 cm ©Yuko Someya