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Artist Interviews
渡辺 豊 インタビュー 2009年
installation view at Tomio Koyama Gallery, 2009
——— 前回の展覧会と較べて、作品がどのように変化してきたかをまずはお話いただけますか。
渡辺 去年、小山ギャラリーでの展示があって、その後府中ビエンナーレがあり、そこまでは作品にある種の一貫性を、あえて意識して制作したのですが、今回はその後の展示ということで、いろいろと試行錯誤をしてきました。
美術館での展示(府中ビエンナーレ)などもあって制作期間が短く、とにかく作らなきゃ、とキャンバスを貼っては、初期衝動に近いような姿勢で画面に向かっていました。そこに見えた形をどんどん拾って、画面に描いて行こうという気持ちが強くて。純粋な動機から来る、原石のようなイメージをとらえる感覚でした。
それから作品が出来てきて美術館に展示を見に行ったり、他の人の作品を見る余裕が出てくると、できあがった作品に対していい部分も悪い部分も見えてきて。衝動に任せてしまったところもあるから、もう少し整理して、考えた方がいいかな、と。例えば、前の作品でここに二本線があったら、それは一本でもいいんじゃないかと思ったんです。もう少し整理して考えなきゃいけない時期じゃないか。より実感を持って、ここにはこの色をこの量で、とか、画面をもっと確実に、強くしたかった。
——— 前回は、背景に家並のシルエットがあり、その前景に突然異空間が現れて、いろいろなモチーフが再構築されている、という構成が明確にありましたが、今回は背景の家がなかったり、どこが背景かよくわからない作品もありますね。
渡辺 制作を続けていくうちに、形にちょっと慣れが出て、決まってきてしまう感じがありました。手前に現れる形も、だんだんと似て来てしまって。それを打ち破らなくては、と思うようになりました。それで、この30号の作品とかの制作を始めたんですよ。
このあたり*1 *2 *3はまだ府中(に出した作品)の名残があります。
それで今度は家が、例えばあんな感じ*2で童話に出てくるようなものだったらどうか。
お菓子の家とか、絵やアニメーションに出てくる家なども、僕の記憶の中にあるいくつかの家を混在させて一つの家にするわけだから、それが現実にあるのか、ないのかはあまり関係ないような気がしてきたんです。現実に見たものでも、アニメの中で見たものでも、絵本の中で見たものでも、記憶の中の大枠としては一緒なんですよ。
——— では、この球体のような物体は、家の屋根?*4
渡辺 はい。
この頃の作品では、もう僕の中で前景に来るものが、それほど大事じゃなくなってきています。後ろの家が面白ければ、それに付随して前の形が自然とできあがる。
以前は、背景はあくまで背景、手がかりとしてあって、その手前にくるモチーフが大事だったんだけど、いつの間にかそれが逆転して、背景が面白くないと、となってきて。すると今度は、それなら家を描けばいいじゃない、っていう話になるんですが、では僕は家の絵を描きたいのか、と言うとそうでもないし。そのあたりをもう一度、更に考えてみようと思って、描いたのがこの作品です。
——— 今度は、再構築されたもののほうをメインに描いていますね。
具体的にきっかけになった、実在するモチーフはあったのですか?後ろは川で、手前は砂場?
渡辺 そう、手前は砂場です。空き地もそうなんですが、僕がイメージする、制作の起点となる場所は、大人になってから生活している場所よりも子供の頃に遊んだ場所の方が強く出て来るんですよ。表面の記憶より、深淵の記憶を糧に描いた方が、僕の中のリアリティが強いので、作品の強度も増すと思っていて。
——— 左手前の穴から、掘ったものがどんどん出て来ている?
渡辺 はい。場面状況を言えばそうですね。女の人が赤ん坊を抱いて座っているような図形をとっています。でもそれはあくまでもアウトラインとしてのみで、別にそれを再現したいわけでもない。アウトラインの形をいかに崩すかが問題です。
——— 確かにちょっと人っぽくも見えますね。
渡辺 何かに見えたり見えなかったりのバランス、ですかね。別の形に見えても良いんじゃないかとは思うようになって。結局、自分の決めた幅の中でどれだけ遊べるかっていうのが問題で。
この作品のあと、また去年の作品みたいに背景と手前とが僕の中でも50 / 50くらいの感じで作れるようになって、ちょっとしっくり来たんですよ。
——— この2点では、また風景があって、前景に構築物、に戻りましたね。*5 *6
渡辺 こちら *5 は、これもあまり言わないほうがいいのかも知れないんですけど(笑)、モチーフとして石膏像を使っています。
僕は今美術の予備校で働いていて、いろいろな石膏像があるんですが、本当の彫刻像とは違う所で、デッサンで描きやすいようにバッサリ切られていたりするんですよ。それをずっと持ち運びしていると、なんだか面白く見えて来て、アウトラインのきっかけになりました。骨格というのを意識する部分や、またそれを破壊するための部分。単に骨組みを作りたいとか、きちんとした構築物をつくりたいわけではなく、(物体が)ぎりぎり立っている状態、そのギリギリの強さを表現したいというか。それで、何か解体されているものからヒントがもらえないかと思って。でも、同時に「ルビンの壷」みたいに、女の人がモチーフになってもいるんです。
——— あの、顔にも壷にも見えるっていう騙し絵の?
渡辺 そうです。その意識ってデッサンするのと同じで。石膏を使ってデッサンを描く時は、外からも中からも形を見なくてはいけない。その行為は絵画の基本でもあると思うんですが、そこをすり抜けて少し遊んでみるというか。
実はこの作品の前に、モンブランで展示する作品 *7 があって、作品の中にモンブランのマークを使うという指定があったんです。まず、僕の作品で使うとしたら窓しか思い浮かばなくて、でもそれだけで良いのかな、と思って、せっかくだし、もっと遊んでみようかと、前景の構築物を「モンブラン」という文字で作ってみたんです。
——— なるほど、気づきませんでした。
渡辺 そうしたら、なんか面白くて。それで、この作品 *6 はアルファベットとかカタカナで「小山登美夫ギャラリー」の文字を入れました。このくらい遊んでも、作品として成立するんじゃないか、と思って。
元々、絵画の中に文字を入れることに、ものすごく抵抗があったんですよ。でもモンブランの作品がきっかけで、こういうのも面白いなって。ある程度自分の中で制約を立てて、その中で遊びきる方法っていくらでも出せるから。気がつく人は気がつけばいいな、と。
——— これは、誰も気がつかないかも!
渡辺 そうなんですよね。
小さい頃って、鬼ごっこを始めると、子供はどんどん新しいルールを作っていくじゃないですか。そんな感じで、ある一定のルールの中で、どこまでならまだ鬼ごっことして成立するか、を試しているのかもしれない。
四角いキャンバスと絵の具と筆があって、そこに、自分の中で生まれてくる空き地だとか家だとかの条件を入れながら、どれだけ遊びきれるか。作品として成立させるために遊べるか。
——— どんどん自由な感じになってきたんですね。
渡辺 そうですね、どこまで許されるか、みたいな。そういう事なんですけど。
さっきから「遊ぶ」しか言ってないけど、良い言葉が見つからなくて。でも絵の中で遊ぶって結構大変なんです。
またいろいろ試して、小さい絵も描いてみたり。大きい画面と同じことは出来なくなるから、ドローイングみたいな感覚で。
そしていろいろ試した後、これ *8 が一番最後にできた作品でした。
——— すごくいいですね、上のほうに、今までとは違う空間が見えるようです。
渡辺 今までの全ての要素が組み込まれているというか。空き地と言えば空き地の設定なんですけど、今までやってきたこと全部を、空間に取り込んで表現したいな、と。
——— 空間がすごくダイナミックに分割されているように見えますね。
渡辺 今まではここまで、出来なかったんです。一つの空間の中で、例えば後ろが家で、手前に空き地っていう空間だと、形が出しやすかったんですよ。僕の中では、手前の構築物のおかげで全部がなんとか繋がっているのではないか、と思っていたんです。僕のテクニックの無さかもしれないですけど、でもそれを打破したかった。
——— そうですね、一体になっている感じがあります。色を効果的に使って、一つの画面に見せている感じもありますが、そういう意識はありましたか?
渡辺 色に関していうと、一つの画面にあまり、同系色を使いたくなくて、青を1度使ったらもう使わない、という、これも決めごとです。補色の出し方、塗り方などもそれによって違ってきますし。
——— 全体的に、なんだか櫃田伸也さんの作品を思い出します。風景の抽象化の仕方が似ている、というか。
渡辺 すごく嬉しいです。
——— 描かれているものは具象だけれど、描きたいのは抽象的な曖昧なもの、なのでしょうか。
渡辺 そう、だからあくまでも、抽象か具象で分けると具象画なんですけど。キーワードにするとしたら、風景があって、そこに物を建てる。それはすごく具体的なことじゃないですか。でもその物が何かわからない、という意味では抽象といえるかもしれません。これからも、実感を持って、現実としての制作をしていきたいですね。
——— 空き地も実は広がりを感じるように描かれていて、広さや豊かさを感じるんですが、でも実際にそこに現れてくるのは壊れていたり、解体されたものですよね。それがすごく両極端というか、不思議なところですね。
渡辺 そうですね。いろいろな見方をしてもらえたら、と思います。
渡辺 豊 interview Octover, 2009
- Interview by Tomio Koyama Gallery
- Photo / Kei Okano:installation view
- Ikuhiro Watanabe :works
- インタビュー 参照画像
- installation view at Tomio Koyama Gallery, 2009
©Yutaka Watanabe
- *1 untitled, 2009
oil on canvas
91.0 x 72.7 cm
©Yutaka Watanabe
- *2 untitled, 2009
oil on canvas
91.0 x 72.7 cm
©Yutaka Watanabe
- *3 Untitled, 2009
oil on canvas
97.0 x 130.5 cm
©Yutaka Watanabe
- *4 Untitled, 2009
oil on canvas
91.0 x 72.7 cm
©Yutaka Watanabe
- *5 *6 untitled, 2009 / installation view at Tomio Koyama Gallery, 2009
oil on canvas
145.5 x 112.0 cm(each)
©Yutaka Watanabe
- *7 Untitled, 2009
oil on canvas
91.0 x 72.7 cm
©Yutaka Watanabe
- *8 Untitled, 2009
oil on canvas
162.0 x 130.3 cm
©Yutaka Watanabe
- installation view at Tomio Koyama Gallery, 2009
©Yutaka Watanabe
- installation view at Tomio Koyama Gallery, 2009
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