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Artist Interviews
長井朋子 インタビュー 2010年
installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010 − 2011
► このインタビューは、オープニング(2010年12月17日)当日、ギャラリーで行われたアーティスト・トークの模様を編集したものです。
——— 今回の展覧会のタイトルは「木枯らしと、こんこ」で、大きな部屋での展示 *1 *2 と、奥の暗くて小さい部屋でのインスタレーション *3 があり、一階でも展示をしています *4 。またギャラリー入口横の壁にはドローイングと展覧会名を描いていただいていて *5 、それも展覧会の一部になっています。まず今回の展覧会のテーマ、どういったことをまとまりとして考えて制作されたのかをお聞きしたいと思います。
長井 「木枯らしと、こんこ」の「木枯らし」は、冬の始めに吹く冷たい風のことで、「こんこ」というのは、多分キツネだと思われている方がいらっしゃると思いますが、キツネではなくて「雪やこんこん」の歌に出てくる「こんこん」です。実はこれは「こんこん」ではなくて、「雪やこんこ」なんです。昔の言葉で雪を「こんこ」と言って、「雪よもっと降れ降れ」というような意味の言葉で面白いなと思ったので、そのままタイトルに使いました。冬になりかけの、寒くなり始めた時期と、冬になって雪がずんずん降り積もっていく時期。「まちわびるまちわびる」という作品 *6 では梅を描いて春を匂わすような感じの絵にしたりと、季節の流れを意識しています。
——— 今回、一番サイズの大きい「眠る」 *7 という作品には、思い入れがあるとおっしゃっていましたが、どういう作品なのかお聞かせいただけますか。
長井 一言で言うと、クマが冬眠に入ったぞという絵です。木枯らしが吹き始めて、そろそろ冬眠に入ろう、春になったらまた起きようという感じの絵。真冬をイメージした奥の黒い小さな部屋には、この子をイメージしたぬいぐるみと寝ているベッドのインスタレーションがあります *8 。タイトルは「冬が終わったらおこしてね」で、眠りについた、真冬のこのクマを再現しています。
——— その黒い部屋のインスタレーションについてお聞きしたいのですが、壁や床にも白い雪を付けたり、時計なども展示してありますね。
長井 あの時計は、50年動き続けている、実家の家宝の古時計です。部屋をイメージしているので、春になったら起きられるように、目覚まし代わりに時計がそばに置いてあります。カチカチカチと心地の良い音が鳴っているので、ぜひ見てください。30分毎にボーンという音も鳴り響きます。
——— この部屋は暖房がとどかなくて寒いので、ちょうど冬の風景の中にいるようですね。
長井 見た方がそのように錯覚してくれると、嬉しいです。
——— 展示室正面の大きな壁には作品がずらっと一面に展示されていますが *9 、これはどういうイメージですか?
長井 去年イギリスに行った時に、古いお城に昔の宮廷の肖像画などが飾られている美術館に行きました。そこで天井までずらっと絵がかかっている展示の仕方を見て、いいなあ、これをやりたいと思いました。京都での個展が決まった時に、こちらに下見に来たら、壁の上部が三角でお城みたいなので、ここなら出来ると思って展示しました。
——— その前は違うテーマをイメージされていたそうですが……。
長井 やはり、展示する実際の場所を見ることは大事だと思いました。実際に展示場所を見ることで、プランが一回転した訳ですから。
——— 一階のほうは、どういうイメージで展示をされましたか?
長井 一階も同じテーマで展示しているので、冬のイメージで見ていただければと思います。
——— 場所によって、ところどころ展示に変化がありますね。例えば、入口横の棚には、小さい動物たちがいます *10 。
長井 あれはぜひ見ていただきたいです。横長の空間をドールハウスに見立てて、自分が人形遊びをしているように物を配置して、とても楽しかったです。いつもインスタレーションをやるのですが、物を配置して、やめたり付け足したりする作業は絵を描くのと一緒だなと思うので、絵を描くのと同じ感覚でやっています。
——— 奥の小さい部屋のインスタレーション *3 もドールハウスですが、もっとスケールが大きくなっています。このように世界を創るように作り込んでいく作業と、身体感覚に近い形で作る作業とは違うと思うのですが。
長井 違う感覚でしたね。部屋全体のインスタレーションは難しくて、最初は手に負えない感じでした。ドールハウスは小さいのですぐに入り込めますが、こちらの部屋は3Dなので、全体を見渡して、あたかも自分が人形になって組み立てている感覚でやっていたので、最初は難しかったです。その空間を何度も何度もよく見ていたら、分かり始めてきたので、これだと思って配置を決めました。
——— 長井さんはこの黒い部屋から展示を始められましたが、最終的には最後に展示し終わったのもこの部屋でしたね。特に最後の方は、長井さんが一人で部屋にこもって、ディテールを作り込んでおられました。中に入って時計の音に耳をすましながら、全体の雰囲気を味わっていただくと、絵の見方が変わってくるのではないかと思います。
長井 絵の中に入った感覚を味わっていただければと思います。
——— では次に、一般的な制作についてお聞きしたいと思います。普段、どういったところからインスピレーションを得て描かれているのでしょうか。また長井さんの特徴として、絵のサイズも様々で、ドローイングやインスタレーションもあり、ぬいぐるみなども制作されています。さらに今回の展示では、新しい試みとして刺繍の作品もありますね。このようにたくさんの種類の作品を、どういうふうに制作し分けているのか、どういう思いで制作されているのか、お伺いしたいと思います。
長井 私の考えでは、絵を描くというのは特別な作業ではなく、色々な素材を使うのが好きなので、自分の知っている素材で使えるものを使って何かを表現したいと思っています。例えば刺繍という方法を見つけたら、その方法を使って絵を描いてみようと思ったりします。また素材だけではなくて、色々な描き方も探りながらどんどん身に付けていきたいです。私は欲張りなのか、色々な楽しみ方をしてみたいです。だからドールハウスで遊んでいる感覚と全部同じで、絵の中では、絵の中にドールハウスの家具を配置するような感覚、人形遊びをするような感覚で描いています。
——— ということは、事前にしっかり計画を立ててから制作を始めるというよりは、なんとなくイメージがあって、どんどん展開させてみるという感じでしょうか。
長井 そうですね。でも、今回もそうですが、個展の時は展覧会のタイトルを頭に浮かべておいて、雪や木枯らしなど寒い季節の絵を中心に描こうと思って制作していました。ただし細かいところは決めてなくて、画面に向って新しいことが浮かぶ度に、どんどん描いていきました。
——— 大きいペインティング作品を描く時でも、事前に別の紙にドローイングはしないとお聞きしています。
長井 はい。頭の中に漠然としたイメージだけ残しておいて描くのですが、その通りになることは滅多になくて、絵の中で色々動いていきます。油絵というのは日々の積み重ねで出来ていくもので、制作の途中で考え方も変わっていくので、最初から計画は出来ないと思っています。私の制作はいつも、出来上がってみないと分からないという感じです。
——— ちなみに一番大きな「眠る」 *7 は、どのくらいの制作期間ですか。
長井 この作品は8月頃から描き始めて、12月に仕上がったので、5ヶ月かかっています。
——— それと同時進行で他の作品も制作されていたのですよね。
長井 そうですね。同時進行で、多い時には10〜15枚くらい制作しています。ですのでアトリエにはずらっと作品が並んでいて、私があちこちに移動しながら描いています。
——— では、こちらの作品を描いたらあちらの作品はこうしよう、というように、作品同士に関連が生まれるのですか?
長井 関連は、自然に生まれているのかもしれませんが、私にとって絵は、その一枚で完結しています。大まかには、私の世界は一つで構築されているのですが、絵を描く時には、その絵の中で一つの物語が始まって終わる、という感じです。
——— 長井さんはペインティングやインスタレーションの他にも、立体やドローイング、今回のように刺繍もされたり、本の装画も手がけられていますが、これからこういうことをしてみたいというイメージはありますか?
長井 山ほどあります。本の装画もとても楽しいですし、洋服やアクセサリーを作るのも大好きで、作るということが本当に好きです。ジャンルを問わず、楽しいものが出来るのなら、何でも挑戦していきたいと思っています。
私は作品の中でぬいぐるみも作るのですが、ぬいぐるみの原点についてお話したいと思います。小学校時代の友達が4年生の時にペンギンが大好きだったので、自分でペンギンのぬいぐるみを作って、サプライズでプレゼントしたのが原点です。友達は今もそのぬいぐるみを取っておいてくれているそうです。ボロ布で作って、目も取れてしまったり、汚らしい色なので、病弱そうに見えるので「病弱ちゃん」と名前も付けてプレゼントしました。今日、その友達に聞いてみたら、あのぬいぐるみの中には綿ではなくて、ティッシュや靴下が詰められていて、ぬいぐるみのようなふくらみを出していたそうです。これがあったから、今があるんだなとしみじみ思い出しました。
——— それは絵を描く前のことですか?
長井 絵は小さい頃から描いていました。人形も自分で作ったりしていました。
——— ものごころが付く前から、ずっと描いていたのですか?
長井 ずっと描いていましたね。祖父など身近な人が絵を描いていたので、自然なことでした。
——— 一階で展示してあるような鳥かごに入った作品は *11 *12 、どういうところから制作するのですか?
長井 まず、鳥かごを雑貨屋で偶然発見したんです。「かわいい、この中に何か入れたい」と思い、私にはその鳥かごがドールハウスに見えたので、買って帰りました。家にはおもちゃのストックが山のようにあるので、この上に黒いネコをのせたらとてもかわいいなあとか、配置しながらイメージをふくらませていきました。
——— かごの中のオブジェは、自分のイメージの中で、どのように構成していくのですか?
長井 それは、絵を描く時の構造の考えと一緒です。漠然と、ここにはショッキングピンクが必要だとか、ここには黒が必要だとかいう感覚です。私にとっては、絵を描く時も、ものを作る時もパズルのような感覚で、私の中の黄金比、正解のようなものがあって、それを模索しながら決めていきます。
——— つまりオブジェの間のバランスのことですか?それとも形を選ぶ時の意味合いがあるのですか?
長井 バランスですね。意味合いは、漠然とした冬の雪の中のお家というイメージがあるので、雪の中だからペンギンがいたりするということです。
長井朋子 interview December, 2010
- Interview by Tomio Koyama Gallery
- インタビュー 参照画像
- *1 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *2 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *3 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *4 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at TKG Editions Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *5 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *6 まちわびるまちわびる Waiting and waiting, 2010
oil, acrylic on canvas
130.2 x 162.2 cm
©Tomoko Nagai
- *7 眠る / Sleep, 2010
oil,acrylic,modeling paste on canvas (2 pieces, 227.5 x 182.2 cm each)
227.5 x 364.4 cm
©Tomoko Nagai
- *8 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *9 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *10 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *11 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *12 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
©Tomoko Nagai
- *1 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011
![*1 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-1-230x158.jpg)
![*2 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-2-230x135.jpg)
![*3 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-3-230x182.jpg)
![*4 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at TKG Editions Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-4-230x142.jpg)
![*5 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-5-230x153.jpg)


![*8 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-8-149x200.jpg)
![*9 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-9-230x172.jpg)
![*10 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-10-230x153.jpg)
![*11 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-11-133x200.jpg)
![*12 installation view from [ Winter Wind and Konko ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010-2011](http://www.tomiokoyamagallery.com/index2/wp-content/uploads/tn-at-12-133x200.jpg)