Artist Interviews

大野智史 「4人のペインティング」 インタビュー  2010年

大野智史 アーティストトーク 2010 untitled, 2009 ©Satoshi Ohno

► このインタビューは、「4人のペインティング」展のレセプション(1月14日)当日、ギャラリーで行われたアーティスト・トークの模様を編集したものです。

——— 作品についてお話しをお聞かせください。

大野 僕は基本的にペインティングをいつも制作しているのですが、それを表現したり展示する形態というのはインスタレーションしたり、ドローイングを貼りつけたり、けっこう西洋のアーテイストから影響を受けていると自分でも思っています。

自分の経験と自分が影響を受けたものから制作をしています。この絵は *1、自分のコンセプトのひとつである、木を描いています。杉の木を描き始めて5、6年くらい経ち、2年くらい描き続けていたら自画像みたいな感じになってきました。今回は顔の自画像のタイプの絵はないんですけど、それくらい身近なモチーフになっています。植物に興味を持って、原生林にも行くようになり、原生林に入ろうとする直前の、原生林の入口のような、門のような絵です。原生林に入っていくというのは、入っていきたいんだけど、身体的には入ることを拒む、そういう好奇心と自己防衛の拮抗しているような、そういう身体とか、感情の拮抗しているようなニュアンスを描きたいと思っています。
このタイプの絵は、模様とか装飾的なものを杉の木とリンクさせて、杉の木の枝のリズムや、象形文字的な役割を持たせています。また杉の木では描ききれない、原生林全体の感じを模様で表現してみたいと考えて描きました。これは門が閉じているものなのですが、去年の展示ではこれが開いて、その先の景色みたいなものをインスタレーションで表現しました *2。その内容とつながるのが向こうの黒い部屋のドローイングになるのかなと感じています *3

あちらの黒い部屋が、ドローイングに囲まれているという展示の形態は僕が考えた訳ではないのですが、僕の表現を理解してくれたような展示ですごく嬉しかったです。原生林とかそういうことを考えている時に、原生林全体がひとつの母性というか母体のような感覚になって、その中に自分が入っていくような感覚になっていったんですね。だからこの部屋の空間が、母性というか、女性の子宮のような空間に感じられて、自分が感じていたものが再現されているみたいな感じを受けました。僕は多分、杉の木と自分が行き来するような感覚とか、女性身体と原生林の総体みたいなものがリンクする感覚とか、そういうのを考えるのはすごく好きというか、癖なんです。そういうように考えて表現することに手応えを感じていて、そういう空間の飛躍とか縮小によって、インスタレーションやペインティングで実現させたいなと今のところ思っています。

ドローイングの人物のイメージが両性具有だったり妊娠していたりしているんですけど *4 *5、それは杉の木と自画像みたいな行き来と似ています。植物に対して敬意みたいなものがあると思うんですけど、その敬意みたいなものを強引に、人間的に解釈してしまうと、ああいうドローイングみたいに醜いものになってしまうっていうイメージがあります。植物、花は、おしべとめしべが一緒になってその後実がなってという、そういうものに人がどれだけ近づこうとしても、たかだかあんな感じなんだよということを描くことで、植物と自分、植物と人の距離を描きたいなというところがあります。そのイメージがあの黒い部屋に囲まれていて、黒いというところが僕は特に嬉しかったです。去年東京でやったインスタレーションの個展とはまた違った解釈というか、同じだけどまた違った答えの出し方を自分が見れたかなという感じがあります。
だいたい僕は、ペインティングだけで展示する機会はあんまり作らなかったので、こういうふうに切り取られて、他のアーテイストと同じに並ぶっていうのはすごく興味深いです。

——— 門が今回は閉じているけど、前回では開いていたとおっしゃっていました。
東京の展示ではこういう壁だけでなく床も使ってインスタレーションでやったということが、門が開いていたということにつながるのですか?

大野 そうですね。つまり自分が入った中の原生林の空間を表現したということです。概念的には子宮の中で、母体、母性とか、そういうものでもある。僕にとって原生林は、生きているものと死んでいるものが半分ずつ存在している感じがあって、それも母性のように感じます。
また前回の展示は自分が原生林の中に入っていくとか、身体感覚みたいなものを自分の経験を通して出力した展示空間になっていました。原生林を再現したようなのではなくて、原生林で僕が感じたものを観客にどれだけ提示できるか。もちろん提示されたものを見た人がどう受け取るかというのはそれぞれですが。例えば杉の木をとっても、杉の木のストロークを強調したり、杉の木の枝のリズムだったり、筆を走らせる感じだったり、そういうものを僕は出力、表現したい。
具体的な杉の木に落とし込めないものを装飾として使ったりするというか…。わりと装飾に関しても考えたことがあって、図書館で調べたら、装飾や文明はその土地に根ざす植物などをルーツとしていることがあり、そこには自然観があるようです。そこで自分なりの象形文字を作るのがベストだなと思って、杉の木の感じを出力しています。

大野智史 interview January, 2010

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
Exhibition Data
「4人のペインティング」 展 
2010.01.08 - 01.30
小山登美夫ギャラリー京都
  • インタビュー 参照画像

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