Artist Interviews

辻 直之 インタビュー  2009年

辻 直之 インタビュー 2009 installation view from [ZEPHYR] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2009

——— 今回の新作「風の精」に関して背景や、作品の特徴などをお話しいただけますか?

辻 ここのところ作った2作(「エンゼル」と「風の精」)以前の作品では、物語とその意味、そういったものの関係を合わせていく、ということをやりたいと思って試行錯誤していたんですけど、それが難しいということになり、あきらめました。

——— それはまずテーマを設けて、そこからイメージを構築していくということですか。

辻 後からテーマを作ってもいいんですけど、とにかくテーマとイメージを合致させるということです。言語的に説明できることと作品とをなるべく近づけていきたいと思っていましたが、それが難しいということになり、やめて2作を作りました。正確には2.5作ですね。途中からやめちゃったので。*1 *2

——— それは「影の子供」ですか?

辻 そうです。それでテーマみたいなものを設けないようにした。手法と長さとか見せる間隔とか、そういった制約だけでも、要素としては始めるきっかけとしては十分多くて。なんとなく頭に浮かんだものを物語のかたちにしていく。それは何か一言でいえるテーマを表現するっていうことではない、という方向性になりました。いわば確固たるメッセージがない、テレビアニメに近づいているというか・・・。あ、こういう言い方は誤解を呼びますね。撤回(笑)。
 意味がないものを目指そうと。意味を持たせるとそれに合わせなくちゃならなくてどうしても無理がでてくるんですね。『これは何々を示唆しているんだろう』とか言われると分からなくなってきちゃうんで… 。*3

——— 象徴的だけれども、その象徴が何を表しているか、という部分は曖昧なままにしておくということですか。

辻 そうですね。

——— では今回の「風の精」はまず風の精という存在、キャラクターがいてそこから展開した?

辻 そうです。生き物以外のものが擬人化されている存在です。去年の夏に始めたんですけど、夏って風のこととかよく考えますよね。それで生まれたんです。名前が決まったのはごく最近ですけど。*4

——— 制作されている時は別の力が働いてそれによってコントロールされている、というようなことを以前のインタビューで語っておられました。

辻 物事の示し方を、言語的な意味体系ではなくて映像のなかの要素でやろうとしています。それは日常生活での意味の組み立て方とすごく違うということですね。それはそれで難しくて・・・。奈良美智さんくらいのイメージの幅があるといいんですけど・・・。

——— ジレンマみたいなものを感じることはありますか?

辻 私、筆が遅いんですよ。もっと速く描ければイメージの幅も広がるかなと思うんですが。自分が普段描いている、例えば裸の人間みたいなもの、はだいぶんと動かしやすくはなってきたんですけど。

——— 近年少し作風が変わったというようなレビューを読んだんですが。つまり以前は暴力やセックスのモチーフが多かったが最近は少なくなったというような・・・

辻 それは少しあるかもしれません。以前性器をよく描いていたのは、木炭画のアニメはあまりとがめられないので・・・それで見たくないようなものを描けるのかなと。でも少し過剰だったかもしれません。今はそういうモチーフを使わなくても、構図や時間の移り変わりで人物の体などを表現する。それだけでもやりたいことは色々ありますから。*5

——— 一番最初に木炭画アニメーションを始めたのはいつですか?きっかけは?

辻 14年前です。大学の卒展で試しで。時間がなかったので早くつくれるものということで最初はやったんです。今はすごい時間かかるんですが・・・。彫刻をやっていたので、木炭のデッサンというのが身近な存在だったんですよね。

——— どのカットを見てもこれは辻さんだとわかりますね。人物とか・・・。

辻 目を大きく塗りつぶすと見つめ返さないんですよ。吸い込まれる感じで。

——— 今回の作品は制作にどれくらい時間がかかったんですか?

辻 一年くらいですね。でもこの人とこういうことやってる時間が多いから(お子さんをあやしながら)、一年っていっても薄い一年なんですけどね(笑)。ただ、混乱した感じはないですね。自分が今をなにやっていて、というのは把握してやっています。*6

——— つくっているときは誰に見てもらいたいと想定していますか?

辻 以前、「影の子供」までは同世代より若い人に、って思っていたんですけど。最近はサブカルチャーの方にはかなわないなと思って。やらなくちゃならないことではないですけど。

——— 奥様の高梨さん担当の音楽は後から入れるんですか?

辻 はい。見ながら弾いてもらったやつをコンピュータで編集しています。

——— ここでバトンタッチ、サウンド担当の高梨麻紀子さんにお話を聞きました。
映像をみて音楽を生み出すってすごいと思うんですけど、もともとそういうお仕事されているんですか?

高梨 いいえ。プロの方ではやりにくいっていう感じが辻にあったと思います。ちょっとギクシャクしているほうがいいかな、みたいな・・・。友達からは『本当は弾けないんでしょ?』とか言われます。音楽よりかは音、という感じですね。

——— 楽器はベース一本ですか?

高梨 基本的にはそうです。以前少しカリンバも使いましたが。

——— 映像をみてすっと出る場合とやり直す場合があるとお聞きしました。

高梨 そうですね。普段楽器に触っていないと、という感じは全くないので、制作にむけてあわてて慣らしたり・・・。さすがにこの10年は触ってますけど・・・(笑)。でもこもって作業するっていうのは楽しいですね。

——— 辻さんには口出しされないんですか?

高梨 されますよ!(笑)切ったりはったり・・・。以前は二人で座ってやってましたけど、今はこの人(お子さん)がいるから、伝えたいことを言い合って一人ずつ作業しています。

interview July, 2009

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
  • Photo / Yasushi Ichikawa:installation view
Exhibition Data
辻 直之 展 風の精
2009.07.31 - 09.05
小山登美夫ギャラリー京都
  • インタビュー 参照画像