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Artist Interviews
小出ナオキ インタビュー 2010年
installation view from [ Maternity Leave ] at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010
► このインタビューは、オープニング(8月21日)当日、ギャラリーで行われたアーティスト・トークの模様を編集したものです。
——— 展覧会のテーマについてお聞かせください。
小出 いつも自分の身近な人、家族などをモチーフにします。一番最初は、父、母、兄、犬をテーマに。きっかけは展覧会の一年前に母が他界したことが始まりでした(「マジックルーム」、2003)。 *1
その次は、当時の彼女(今の奥さん)をモチーフに、カップルをテーマとした作品を制作しました(「二人の浴室」、2004)。 *2
その後、結婚することで結婚式自体をテーマとした作品を制作しました。その展示では、結婚式場に作品を持ち込み、その作品と親戚や参列してくれた方と一緒に記念撮影をするという作品を作りました(「Marriage」、2006)。 *3
そして前回の展示では、引越をしたり、おばあさんが亡くなったことで、お盆(亡くなった人が家に帰って来る)という日本独特の行事をテーマに展示を行いました。大きな雲の立体の上に亡くなった人たちが乗っていて、僕たちを見ているという情景を作り出すと同時に、雲の中が部屋になっていて、その中がパラダイスであるという状況をドローイングや、ペインティングでも制作しました。またその頃から雲をモチーフに作品を作る事が多くなりました(「In These Days」、2008)。 *4
今回に関しては、二人の間に子どもが生まれたことをテーマに制作しました。始めの頃は、FRP、ラッカーシンナー、電飾などを用いて、比較的工業的というか、ケミカルな素材で作っていました。ただ子どもが生まれてからそれまで気にしていなかった「素材についての感覚」が気になりだし、FRPやシンナーといった素材を使わずに作れる方法を模索し始めました。最初は石粉粘土(固まると彫刻刀で削れたり、ヤスリで磨いたりも出来る素材)で作っていたのですが、ちょうどその頃奈良美智さんが陶で作品制作をしており、作品を作っている滋賀の陶芸の森を拝見する機会がありました。そこには作家が滞在して制作できる施設があり、新しい素材にチャレンジしてみようという思いから、今回の展示ではその陶芸の森で作った陶による作品を新たに展開するにことにしました。
——— 今回初めての陶という素材と、これまで扱っていたFRPなどの素材はどのような違いがありますか?
小出 最初FRPを使っていたのは、造形をする上で自由度が高く、そこまで専門的な知識が無くても簡単に形が作れることや、修正または微調整など、融通のきく部分も多いという点が大きな理由でした。僕自身元々平面を専門としていただけあって、非常に入りやすい素材でもありました。ただあまりにも自由すぎて、とことん形を突き詰めるようになる反面、形に対してやりきらないとその甘さが出てきてしまう素材でもありました。
今回陶を初めて使ったわけですが、形を作って焼成するとういう行程によって自分の意思を100%反映させることが難しく、ある意味責任を放棄することが出来ました。焼けて窯から出てきたものをいかに自分で受け止めるか、納得させるかという部分に比重をおけるようになり、全部自分でやらなければならないというプレッシャーから解放され、次々に作品を作るきっかけにもなりました。
また元々立体物に彩色することをしていたのですが、FRPを使っていた時は塗料を完璧に調合して色を塗っては、また別の配色で調合をして塗るということを繰り返して、自分の納得する色に落とし込んでいきました。陶に関しては焼成前に想定していた色と焼成後に出てくる色に違いがあり、受け入れることと、次はどうしたらいいのか、どう生かせるのか、次の作品を作るきっかけが生み出されました。結果的に自分に合っている素材ということに気づくことができました。
——— 陶芸の森という違った環境で制作されることで何か変化はありましたか?
小出 陶芸の森のスタッフの方には非常に感謝していて、全くの素人の状態でやらせてもらいました。おかげで技術的な部分には時間を割かれずに、作ることだけに集中することができました。技術的な部分を高めるとFRPを扱う作業と似通う部分があるので、それを棚上げして造形的な部分に特化できたことは大きかったですね。
——— 雲のモチーフはFRPでも作られていたと思うのですが、陶で作られることで何か違いはありましたか?
小出 陶で作り出そうとした時に、まずは雲を作ろうと思いました。例えば人や物だとどうしても固有の形というものがでてきてしまうけれど、雲だと固有の形というよりはイメージで形が想像出来るので、まず作るとなった時に最初に思いつきました。今回展示している作品だと、まずは黒、次に白、ピンク、青といった順に制作しました。 *5
——— 雲の作品の彩色にはどのようなものを使われたのですか?
小出 これは釉薬ではなく、陶土の成分を水に溶いた物に色の顔料を混ぜて、エアコンップレッサー付きのガンで塗布した物です。ガンで塗布する技術はFRPの時に習得していたこともあり、一番やりやすい方法でした。自分の持っている技術とうまく摺り合わせてこの作品は出来たのではないかと思っています。実際釉薬をかけるとツルッとした感じに仕上がるのですが、あえて土っぽい感覚を出すことで、これまでのFRP作品とは違う意識で作りました。
——— 他の作品についてもお聞きしたいのですが、この小さなものが集合した作品はどういった作品ですか? *6
小出 僕、嫁、娘に対して降ってくるであろう災いを具体化する方法はないかと思い制作しました。この小さいチームは小出家の敵みたいなもので、鬼や骸骨、動物に関しても家に対して悪さをしているという感覚で作りました。取り立てて絶対悪という様なものではないですが、自然に起こってしまう、呼び込んでしまう(例えば自分で足をぶつけて誰にも文句を言えないことであったり……)状況を具体化してみました。ただ元々こういうものを作ろうと思って小さいのを作っていたのではなく、大きいものを作っているときの乾燥待ちみたいな時に、こうした小さい作品が生まれました。
——— 彩色はどのように?
小出 これは下絵具と呼ばれるもので、粘土を焼成するのと同じ温度で色が定着するものです。日本製の下絵具だと地味なものが多いので、陶芸の森の方に勧められたアメリカ製の下絵具で彩色しました。
——— 陶の作品以外にペインティングも展示されているのですが、それについてはどうでしょうか?
小出 元々大学では絵画科を出たのですが、卒業後描けない時期があり、そういった経緯もあって立体を制作するに至りました。その後、平面の作品も何点か制作したのですが、今回陶芸という新しい素材を使ったこともあって油絵具で初めて描きました。アクリルだと平面的な色の塗り分けになってしまうのですが、油絵具は素材の強さがあるので、マチエールのごてごて感だったり、深みのある発色が出たりする部分にひかれていました。
今回の平面作品のモチーフは僕の娘です *7。制作時には、とにかくマチエールをつけて、どこまで油っぽいごてごて感が出せるかに主眼を置き、砂を混ぜたり、油絵の具そのもので描くこと重視しました。
以前は100%画面を埋めて完成させなくてはならないと思っていたのが、陶を扱うようになって以来、出来たものに反応し、受け入れる気持ちを得たことで、平面作品を描く助けになりました。
——— 陶の作品は平面の作品と平行して作られたのですか?
小出 そうですね。ただ、陶は立体物で違う脳みそを使って制作しています。平面は四角のなかでどのように絵を作るかを考えますが、立体物はものが存在しているので、非常に強いし、情報が多い。立体物というだけで、説明しなくても物として存在できます。
平面は2次元で、立体より1次元低い中で世界を表現しなければならないため、見る人を誘導し心地よくする技術が必要で、それで昔挫折したんですけども、今では、100%完成しないから次が作れる、と思うようになりました。
——— ドローイングはどういった作品ですか? *8
小出 十字の眼をモチーフとしています。普通の眼でない光った眼には、神秘性というか、人間の力以上のものを持つ印象があります。上の方に描かれた人は、生まれる前の娘をイメージしています。その周りの人は娘のサポートというか先祖のような存在で、それが宿って、子どもの眼になっている。子どもの眼に見えている風景を描きました。
——— 小さい黒い部屋の展示はどういった作品ですか?
小出 中のビカビカと光っているものは、災いをもたらすものの象徴で、そこに僕と嫁と娘がさらされている風景です *9。子どもが生まれて大変だけど、災い=北風のようなものは吹くけれど、頑張ろう、というような。毒々しい感じは、アジアの悪魔像的なペインティングや、ヒンドゥー教の祭壇のイメージで作っています。これは陶を扱うより前から作っていて、石粉粘土を使っています。子どもが出来て不安な気持ちを克服したいときに作りました。もうひとつの黒い陶の作品は、子供って、ダークサイドや小悪魔的な部分を持っていて、親がどれだけ辛くても子供は自分のやりたいことを通しますよね。それを受け入れる作品です *10。
——— 妊婦をモチーフにした、今回のメインの作品についてお聞かせ下さい。 *11
小出 これは臨月状態の嫁を山に見立てていて、その山の中に胎児の世界があり、生まれるのを待っています。生まれる前の世界が胎児にとっては安住の地なのかな、と思っていて、これは母親という大きな山の中から、大変な世界へ生まれて来る前の段階です。隣の部屋にいるのは僕で、病院の分娩室の隣で父親が待っているようなシチュエーションを作り、うまく生まれて欲しい気持ちを表現しています。 *12
嫁の臨月は僕も初めて見る状態で、男としては生まれるまで実感が無かったんですけど、産まれた後にあれはこういう風なのではと想像しました。
奥にはたくさん動物なども隠されています。
この作品は陶芸の森の大きい窯で、僕も大きい作品を作ってやろうと、スタッフの方々の力を借りて制作しました。
小出ナオキ interview August, 2010
- Interview by Tomio Koyama Gallery
- インタビュー 参照画像
- installation view at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010
©Naoki Koide
- *1 installation view at project room / Tomio Koyama Gallery, 2003
©Naoki Koide
- *2 installation view at project room / Tomio Koyama Gallery, 2004
©Naoki Koide
- *3 Marriage (parents), 2006
C-print
100.0 x 125.0 cm
©Naoki Koide
- *4 installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008
©Naoki Koide
- *5 installation view at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010
©Naoki Koide
- *6 small stuff (L), 2010
wood, ceramic
(小屋)h.61.5 x w.95.5 x d.40.0 cm、(台座) h.73.0 x w.94.0 x d.30.5 cm
©Naoki Koide
- *7 May 8th, 2010
oil on canvas
227.5 x 182.0 cm
©Naoki Koide
- *8a eyes, 2010
acrylic, pencil on paper
76.5 x 60.8 cm
©Naoki Koide
- *8b eyes, 2010
acrylic, pencil on paper
77.5 x 58.6 cm
©Naoki Koide
- *9 An evil stuff from the north, 2009
mixed media
h.109.0 x w.76.0 x d.32.0 cm
©Naoki Koide
- *10 installation view at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010
©Naoki Koide
- *11 Mt. Momsy & St. Baby, 2010
ceramic
h.75.0 x w.220.0 x d.80.0 cm
©Naoki Koide
- *12 Mt. Momsy & St. Baby, 2010
ceramic
h.75.0 x w.220.0 x d.80.0 cm
©Naoki Koide
- installation view at Tomio Koyama Gallery Kyoto, 2010
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