Artist Interviews

山本桂輔 インタビュー  2009年

山本桂輔 インタビュー 2009 installation view from [rise] at Tomio Koyama Gallery, 2009

起きてるように見えるもの、すぐに手に入るものには、あまり興味がない。中間の時点で何を見つけられるか、が大事

——— どれくらい前から作品を作り始めましたか?

山本 去年の5月後半にデンマーク、6月にバーゼルに寄って、帰って来てから考え始めたので、7月から大体8ヶ月で彫刻と絵画を仕上げました。せっかくこの大きいスペースの話をいただいたので、どうせなら自分の手に負えないようなものに挑みたいという欲求が強くありました。

——— このような形の彫刻 *1 作品は、今回3回目の制作ですね。

山本 もう少し違う形で彫刻を作りたいという気持ちもありつつ、今まで蓄えて来た中でわかってきた部分を、ひとつやりとげたかった。大まかな形は今までと同じように見えると思うけど、細かい部分で、今までは気づけなかったことを確認しながら、作業していきました。

——— 今回新しい経験だったのは?

山本 まず、今までに無いたくさんのお手伝いを。5人くらい。1—2人でやろうとしたら、とても無理で。
あとは、色の使い方や塗り方を、わりとすぐ決められるようになってきたように感じられました。アクリルと油絵の具の使い方も以前よりは幅広く考えながら進められるようになってきたかな。マットな部分はアクリル、テカテカしているところはオイルをまぜた油彩で、まぜてない油彩のところもあるし。

——— 以前は油彩中心でしたね?

山本 アクリルも使うようになったら、木に塗るとぴっちり色が吸い付くような感じがして、形と色とが一致するような感触がありました。油彩だとそういう風に一体化していくというよりは、もう少し物質感があって、ふわふわしたような感じで。でもアクリルは、乾いてみると結構色が違ってくるので、やってみないとわからない。面白いけどストレスフルでもあり、思ったより綺麗に出てくるところもあれば、なんでこんな風に…ということもあって。やっていくうちにだんだん、想像できる部分も出てきましたが。
透明色の油絵の具も、独特の発色なので、多用しました。ここの赤い格子の所 *2 は、明るい部分だけは、下地を白く塗ってつぶしていて、あとはそのままで、それぞれに同じ色を塗っただけなんです。塗り分けている訳ではなくて。透明色の絵の具は、乗せる量と下地の色とによって、全く見え方が変わってくるので、ペインティングでもいろいろと試しながらよく使っています。

——— 今回、このような巨大な彫刻 *1 を作ったのはなぜでしょう?

山本 制作を続けていると、やりやすいサイズや、方法論というのができてきてしまって。でも僕としては、どの部分でもいいから常に前進、更新したい、という思いがあって。一つの手段として、自分がやったことのないサイズ、というのは否が応でもリミッターが外れるというか、今自分が持っているやり方では完成に至れないわけで、そういった中に身を置く事は、大事であると考えています。逆に小さいサイズにしても難しかったり、自分にとって心地いいサイズではなくて、新しい発見ができるものに挑戦したかったんです。
木の特性として、高さを出すのはそれほど難しいことじゃない。でも量を出すというのは、必ずしも木の自然な姿ではない、というか。基本的に近道をしないのが好きなんです。 出来事と対面して、何をくみとって何を立ち上がらせていくかということが大事なので、フォーマットが違うと起こる出来事も変わってくる。

——— 絵に関してはどうですか?

山本 例えばこの2点組の絵 *3 は、最近正方形に興味があって、正方形というのは不自然なほどニュートラルな形だと思うんです。僕が絵を描くときは縦長とか横長とか、引っ張る力や圧が既にかかっている形に、それをきっかけにして描いていったりするのだけど、正方形にはそのきっかけが無い、整いすぎている状態。その中で、どういうものを作り上げられるか、ということに興味が湧いて来たんです。これは正方形2点で1組のものですが、基本的には並べて描いているけど、時々別々にして描いてみたりしていて、起きる出来事がちょっと複雑になるというか。

——— 複雑になっていったほうが、面白い訳ですよね?

山本 それに意味があるのかないのかその時点ではわからないけど、いろんな事を盛り込む。この絵は、壁にスペースがなくてかけられなかったから床に置いて描いてたんだけど、置いた時点で、床が少し傾いていて、2点の高さがずれていたんです。でもそのままのほうが面白いかなと。それで、このへんは少し合わせたいなとか、そんなこと全く忘れてふつうに描いちゃったりとか、それが最終的に意味を持つか持たないかは、自分で判断していって。起こる現象も大事だけど、その現象を残すのか、つぶすのか、という判断こそが大事で。

——— 山本さんの作品は抽象と具象の間、と言われることもありますね。人の顔みたいに見えたりするところは、完全に分解してしまわないで、人のようにずっと残っていて。目かな?きのこかな?とか部分的には思うけど、全体的にはなんだかわからない。例えば人のフォルムを残すことに意味はありますか?

山本 自分の中で、抽象にとどまる事と、みんながイメージしやすいものにする事は、等価であって、大事なのは必然性です。例えば、より皆の目に留まるものにするのかどうかとか、自分で配分していく。立ち上がらせようとする過程で本当に様々な出来事があるわけです。一見起きているように示す、完成しているように見せるのは、すごく簡単で。その中間、起こす途中に、何を引っ掛けて起こして来れるのか。その中間にこそ無限のスペースがある。そこで何をつかみ取って来れるかが、ものを作る上で、重要なところかな。

——— プロセスを残していく?

山本 いや、ただプロセスを残すということだけなら簡単だと思う。起きてるように見えるもの、すぐに手に入るものには、あまり興味がないというか。やっぱり、中間の時点で何を見つけられるか、が大事なんですね。制作過程で、ということでもあるし、僕と作っているものとの関係性、においてもそうだし。常にその瞬間瞬間が大事で、最初から予想をきっちりたてて作る、ということはしないです。

——— いつもラフなスケッチを元に作っていますよね。

山本 いや、スケッチはあてにはならなので、描かない事も多いし、きっかけとなるスケッチがあったとしても、それが大事なのはある意味その瞬間だけ。作り始めたら、そっちの方が大事だから。

——— ペインティングと彫刻は同時に作っていくのですか?

山本 基本的にいつも同時進行です。どちらかを作ってると、どちらかをやりたくなってきて。

今まで気にも留めていなかった色が急に気になって、理解できるような瞬間が確実にあって。
いろんな色を使えるようになりたい

——— 今回は絵の具の塗りが、すごく盛られていますね *5 *6 。質感が違う所もあります。レリーフみたいに、立体的になっている箇所も。(ギャラリー2へ移動)

山本 同じ種類の赤でも、いろんなやり方でその見え方とか、画面の中での抵抗感みたいなものが全然違ってくるので、自分の中でこの部分はどうするか、という細かい判断を積み重ねていった結果、で。あと後半の方に描いた絵は、絵の具をつけた筆を振って、投げつけるっていうのをやってて。
乾くスピードも違うから、重ねた時破れて広がるものもあれば、そのまま重なっていく部分もあるし、いろいろあって。

——— ここのピンク色のところ *7 は、何か質感が違うような?樹脂のような感じですね。

山本 透明色の絵の具に、ワックスが入っているメディウムを混ぜています。そうすると透明な樹脂みたいな独特な質感になるんです。

——— 渡辺 豊さんが初日に来てくれていて、絵を学校で習った人は描き方のセオリーに縛られてしまいがちなんだけど、山本さんのは全く縛られていない(笑)描き方で、レリーフ的なところなんかも含め、やりたくてもできないしやれと言われてもできないから、すごく悔しいって。

山本 絵は独学みたいなもので、経験を通して、いろいろと試しながら自分の実感を蓄えて来ました。それほど…絵の本質から離れているとは思わないんだけど(笑)絵のセオリーって言うのは、よくわからないなあ。

——— 暖色の色使いが多いのはなぜですか?

山本 自分の中でそうは思わないんだけど、言われてみれば多いかな。自分が使いやすい色というのは確かにあって、でも、制作の中でふと今まで気にも留めていなかった色が急に気になって来たり、気づくというか理解できるような瞬間が確実にあって、少しずつバリエーションが増えて来たかな。いろんな色を使えるようになりたい。

——— 画面の中で、○とそこから出る光線のように出て来ている直線がよく出てきますね?*8

山本 いろいろな流れの中から出て来たもので、「何」とは明白には言えないんだけど、直線だったり曲線だったり点だったり、いちばんシンプルなパーツが変換されたり、くっついたり離れたり、圧縮されたり広がったり、の繰り返しの中で、いろいろなことが同時多発的に起こっているんです。
ある所に点があって、それが放射的に関係を持ちたがって、飛んでいくと、そこにたまたま顔があって、くっついたら三角の鼻みたいになったから、あれ、なんか面白いな、と。

——— アシスタントの方は、どの部分を作るんですか?

山本 大まかな形を粗彫りしてもらって。それから、つぶつぶの部分を彫ってもらったり、接着してもらったり、あとは内ぐり、ですね。そのままでは重いから中をある程度くりぬいてあります。マケットを作ったりはしないから、彫りながら考えていくので、指示は常に流動的なものとなります。

——— ギャラリー2の彫刻 *4 は、新しい形ですね。

山本 基本的に絵にしても彫刻にしても、それだけで独立して在る、どこへ置いても良いものとして作ってるんだけど、彫刻はやはり空間ということがあるな、と少しずつ思って来て。この作品はまた次へつながるものとして、うまくいったような気がする。

——— どのあたりがうまくいった感じですか?

山本 この彫刻が、この部屋を感じさせるような気がする。

——— 確かに!

山本 あまり収まりがいいものにはそそられないので、これは見るべきポイントをすごく上の方に作っていて、それで上昇していくような感じ。ひょろっとした、小さい木みたいなサイズのイメージで、あとはデンマークに行った時、いろんな照明器具を見て(笑)。そういう経験も影響していると思います。

山本桂輔 interview March, 2009

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
  • Photo / Kei Okano:installation view
Exhibition Data
山本桂輔 展 起 立
2009.03.07 - 03.28
小山登美夫ギャラリー東京 7F
  • インタビュー 参照画像

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