Artist Interviews

山本桂輔 インタビュー  2010年

山本桂輔 アーティストトーク 2010 installation view from [ Crossing ] at TKG Editions Kyoto, 2010

► このインタビューは、オープニング(1月14日)当日、ギャラリーで行われたアーティスト・トークの模様を編集したものです。

——— 今回の展覧会は全て新作ということですね。

山本 そうですね。

——— 「横断」というタイトルですが、どのようなイメージなのでしょうか?

山本 基本的に僕は、何か特定の説明とか意味をもたせようとして作品を作ってはいません。ただ自分の世界の説明でもなく、他の様々なものから得られる体験や内容の再現だったり、既存のものを貼り合わせているだけという事でもないもの。意味や説明よりも、存在に対していかにアプローチしていくかというのが僕の制作動機の大きなものです。
制作する上で関わってくる要素は無数にあるのだけれど、いかに制作の過程で仕掛けて、気づいて、絡めて、起こしていく事ができるか、ということが重要になってきます。つまり、何かと何かの中間のようなもの、もしくは何か作品ができるまでの中間のこと。色々な要素の関係性や配分、例えば意図的なものと偶然的なものとか、分かりやすいことと分かりにくいこととか。関係性という中間の存在は無数にあり、そしてその中間にこそ無限の広大なスペースがあると思っています。中間をいかに認識しながら進んでいくか、いかに横断していくか、という感覚ですね。
また、画面上での事で言うならば、画面を横断する事で違う空間が生まれてきて、全体に起きる運動が変わっていく、ということだったり、同時に線と線がつながることで形や関係性が変わっていくことだったり。そういうことが重要だと考えて制作しているので、「横断」というタイトルを付けました。

——— なるほど。山本さんは彫刻出身の作家ですが、彫刻のほか、ドローイングやペインティングの制作もされています。今回は平面作品しか出品されていませんが、その中でもいくつか作品には、板などが貼り付けてあります。このようにキャンバスの上に絵の具で描くだけではなく、別の素材を使用されているのは、なぜでしょうか?

山本 常に、何か行動を起こしたことによる影響とか、起こした行動とそれが与える全体の影響というのを考えて作品を作っています。例えば僕がよくやることが、問題的な、明らかに違和感が生じるものをその中に投げ込むことなんですね。

——— 例えばこのペインティングだったら違和感のあるものはなんですか? *1

山本 その時の僕にとったら、その板を貼り付けてみるということだったんですね。

——— 板を貼り付けるっていうのは、木彫を作ることと関係があったのですか? 身近な素材だったからたまたま木だったということでしょうか?

山本 いや、それは関係ないです。木だけじゃなくて、厚紙を貼ってあったり、樹脂ボンドをつけていたりする作品もありますよ *2 。もちろん僕が言う違和感を与えるものとは、異素材に限った事ではなくて、色の関係性や、空間の質だったり、違う価値観の関係性についてなど、もっと広い意味でですが。
なかにはある紙に貼った厚紙の切り残った形を、別の作品に配置させているものもあります。基本的にゴール地点を決めてないので、いかにその中で、より魅力的な運動を起こすか、その為に色々な事を仕掛け、そして見極めようと努めています。そういう問題をやることによって、自分に課題を与えているとも言えるかもしれませんね。
当たり前の話ですが、最終着地地点は最後まで分からない。そういった中で、単純に下地をまずどうやって設定して作るかとか、例えば最初からある程度のきっかけとして、何かイメージがあるのかないのかとか、出だしの段階からして色々あるわけです。これらは全部、僕にとっては等しい価値のそれぞれの要素であって、その中で身一つで反応し、思考し、判断していく。常に、最終的により良い所に着地させる為に努めています。

——— 以前の作品は、具象的なものがあったと思いますが、それがだんだん抽象的なものになってきているように思います。

山本 どういう道のりを歩んでいくかという事は、作家にとってとても重要な事で、一つの表現と言っても言い過ぎではないと思います。僕にとって作品は、リサーチであり、一つの結果であり、また次へとつながる過程でもあります。
例えば今の自分としては、より具体的なモチーフは、甘い果実みたいな存在で、それをすぐ手に取りたくなるというか、それを取ってしまえば手っ取り早く作品になりそうな気がするんです。具体的なモチーフがいけないという事ではなくて、そう思ってしまう自分がいる事が問題なわけです。なので僕は基本的に今は、すぐには取らずに耐えています。

——— なるほど。

山本 それが自分の中で、そして作品の中で、本当に必要なものなのか、常に何度も確認していかなくてはなりません。そういう事を見極めていく中で、ある種の説得力のようなものが表れてくると思っているのです。

——— その見極めはどうやってされるのですか?

山本 それは、説明がすごく難しいところですね。自分の今までの積み重ねて来た経験だったり、経験に裏打ちされた勘のようなものを頼りに判断して歩いていくしかない。僕は、半分はそれを使って、もう半分はやっぱり一歩踏み込むため、そこに何かがあるような予感がする方へ勇気を持って進もう、というふうに思っています。分からない事、知らない事だらけなわけで、そういった中で、できる事は、とにかく粘るっていうことかもしれません。すぐには判断できないものなので、長い間飾ったりもします。
あとは、わりと作品を描きながら回転させることがあります。例えばこの作品は、最初もっと小さいドローイングだったんですけど、やっていくうちに、どんどん紙を付け足したり回転させたりして、サイズも一回り大きくなり、こういう一つの回答を導き出しました *3
少なくとも僕の中でそれが、今まで歩んでない道であるっていうのは、まず絶対条件なんです。でもこれらの事はある意味ですごく個人的な判断でもあるわけで、あとは見る人がそれをどう感じるか、多くの事と繋がりえる作品となるかどうか、シビアな現実にさらしていく事がとても重要な事に感じます。

——— 絵画を回すこともあるんですね?

山本 はい、あります。

——— 回した結果、正しいと思うときもあるわけですか?

山本 うーん。そこからまた色々やります。そんなに簡単ではないです。そこでまたやって、また元に戻ることもあります。

——— 選択についてですが、スケッチをされるのですか? 事前にドローイングを描いて考えて、そこで決断をすることもあるんでしょうか?

山本 さっきお話したように、道のりが一つずつ違うので、きっかけとしてスケッチがあるものもあれば、全然無くとりあえず始めるものもあります。やりながら作戦会議のようにスケッチすることも。

——— スケッチするときに、フレーミングみたいなことをしますか?

山本 基本的にスケッチというのは、その瞬間は役に立つんだけど、その後は常に動くので、常に僕は作品と実際に向き合うことを大切にしています。
だから最初から、そのものがどういうものであるかということは、全く決めつけないで向き合います。

——— あなたの作品の中に、リズムがすごくあります。制作しているとき、音楽を聴きますか?

山本 そうですね、音楽は聴きますね。

——— どんな音楽ですか?

山本 まあ、色々と聴きますが、ロックだったり、音響系だったり、エレクトロニカだったり。

——— これからはどういう方向で制作するんですか?

山本 そうですね、どういう方向かというのは分からないのですが、ここ一年くらい、彫刻を作っていないので、彫刻を作る道のりに対して、新しい作り方、つまりもうちょっと絵のように様々な次元をいったりきたりしながら、複雑な道のりで作りたいなというところがあります。この一年間で絵を描いて得たものを活かして、彫刻でどういうアプローチができるかっていうのは、すごく今興味があることですね。

——— ペインティングを制作される時は、ずっとペインティングばかりなのですか?

山本 今までは両方やっていたんですけど、とても大きな彫刻を作って、ちょっと距離を取りたかったのです。

山本桂輔 interview January, 2010

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
Exhibition Data
山本桂輔 展 横断
2010.01.08 - 01.30
TKG エディションズ京都
  • インタビュー 参照画像

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