Artist Interviews

泉 イネ インタビュー  2010年

泉 イネ インタビュー 2010 installation view from [ Book Sisters (incomplete) Spring Sunlight in Shadow ] at Tomio Koyama Gallery, 2010

——— 今回の作品展はMA2 Galleryとの同時開催ですが、小山登美夫ギャラリーでは「影の春光」と題して展示致します。

泉 本姉妹という言葉で繋がる私の個人的な友人や知り合いとの交流を通して制作しました。知り合いに、研究のために日常的に本に囲まれている人、出版をしている人、自分の読み終わった本が並ぶ本棚を酒を飲みながら眺めるのが好きな人、子供のころから本に親しんできた人などがいて、それら個別の友人たちを一同に会わせたい、と思ったことがきっかけでした。しかし、ただ「こちらは誰々さんです」と紹介するだけでもつまらないので、「本姉妹になってください」とお願いしたのです。
もともと、私は絵を描くことで表現してきましたが、文字・文章による表現に愛着をもっている人を素敵だなと思っていました。そのような思いを持っている人たちを一箇所に集めてみたいと思って、皆に招待状を出しました。「10年ぶりに会うという設定で」「本姉妹なのでお互いに敬語は使わずに」ということもお伝えしました。2008年に初めて「お茶会」と題して会合を持ち、徐々に回を重ねるにつれて本姉妹たち個々の交流も始まり、新たな展開が見えてきましたが、今回本姉妹に従姉妹が加わり、春の宴と題した顔合わせの集まりを題材とした作品を小山登美夫ギャラリーで展示しています(MA2 Galleryでは冬の宴がモティーフとなっている)。

——— お茶会の様子など本姉妹のタイムラインを追って見ることができる展示もありますが、ペインティングも同時に展示されています。これらの主題はどのようにして決まってゆくのでしょうか?

泉 ペインティングは「姉妹」の個人的な持ち物を題材にすることが多いです。実際に四女の家に行き、彼女の着ていたワンピースを脱ぎ捨てたような格好のまま写真撮影し、それを元に作品制作した«I was not a dress (forth sister's dress as a motif)» *1 や、「従姉妹」が本姉妹の従姉妹となるキッカケの、亡くなったお父さんとの本の思い出のある実家を訪ね、ご両親の結婚式の写真を見せて頂き、それを題材に«The moment I was opening or closing(my cousin's parents' picture as a motif)» *2 を制作しました。

——— "The moment I was opening or closing"は日本語で言うとどのような言葉ですか?

泉 これは実は英訳が難しかった言葉で、日本語では「それ自身が開こうとする瞬間、もしくは閉じようとする瞬間」です。英語だと主語が何かを明確にしないといけないのでI(私)を用いましたが、Iとは扉自身のことです。「閉じるのも自由、開くのも自由。」っていう、展示会を見るのも自由だし見ないのも自由というか、それを選ぶのは見る人自身、ということです。

——— «コサージュもしくは鬼のような風景1» *3 というのも、面白い作品タイトルですね。

泉 人には誰しも表面に見えるものと奥に潜むものがあるように思います。私には、それはちょうど植物を上から見たときのふわっとした感覚であるとか、林や森を手前から奥に見入るときの感じに似ていると思いました。そのような着想から制作した作品です。

——— このランプシェード型の植物の作品は低い位置まで下げての展示 *4 ですが、これには何か理由があるのですか?

泉 ランプシェードは既製品で要らなくなったものをもらって、缶に入れた植物をつけました。ランプシェードだから普通だったら上にあるし、でも植物だから本当は下にあるし、どっちつかずの感じです。姉妹に合わせて6つあれば良かったんですけど(笑)。

——— 制作の面で何か変化や新しく得たことなどありますか?

泉 紺泉として活動(2002-20007年)していたときからと比べるといろいろあります。以前は工芸的なイメージを意識したオブジェのスタイルで制作していましたが、作業のためにずっと篭り切るという感じでした。子どもが産まれてからは子供を連れて外に出たり、人と会わなければいけないという気持ちが強くなっていました。ただ人と会うといっても誰でもかれでも良いというものでもないし、そういう意味で本姉妹(身近な友人)と集うことが人と会うことにつながっています。
また、今回油彩の作品を展示しましたが、油彩を描きたくなったのは実は以前のオブジェ制作の反動なんです。オブジェ制作は、これを作りたいという最終的なかたちが明確にイメージできているものをつくっていましたが、今回油彩は7年ぶりということもありましたが、自分のコントロールできない筆のタッチなどを試してみたいという思いがありました。また、本姉妹という人と人とのつながりを通じて制作するという点も、最終的な目的地を定めないという点で以前とは異なる試みです。

——— 本姉妹の輪には近年「隣のおじさん」なども登場して、本に関わるつながりが広がってゆく印象があります。この未完本姉妹の物語が完成するときはどうなるんでしょう?

泉 それは私も分からないです。静物や動かないものを対象にしているのではなくて、人間との関わりの中で発生していることなので、予想がつきません。でもいま進行していることがあって、これは冬の宴でやったのですが、10年後の書庫がどうなっているかというテーマをみんなで話したんです。その書庫までは掘り下げてゆきたいです。

interview June, 2010

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
  • Photo / Kei Okano:installation view
  • Ikuo Watanabe :works
Exhibition Data
泉 イネ 展 未完本姉妹 影の春光
2010.06.26 - 07.31
TKG Contemporary:小山登美夫ギャラリー東京 6F
  • インタビュー 参照画像