Artist Interviews

福永大介 インタビュー  2011年

福永大介 インタビュー 2011 installaton view from [ To have something as support ] at Tomio Koyama Gallery, 2011

► このインタビューは、オープニング(1月22日)当日、ギャラリーで行われたアーティスト・トークの模様を編集したものです。

——— 小山登美夫ギャラリーでは3度目の個展となります。これまで福永さんは、モップや掃除用具、タイヤといった、私たちの身の回りにありながらも、普段は目につかない物体をモチーフとして描かれてきました。今回の展覧会では、福永さんの作品にはじめて人物が描かれています。なぜ人物を描こうと思われたのでしょうか。

福永 人物は以前から描きたいと思っていました。今まではどんな人物を描けばいいのかがわからず、いろいろと考えていました。ただ、人物を描くのならば「人間性」みたいなものが表現したいと思ったんです。また、その「人間性」はいつ表れるのか、とも考えました。新作に登場するのは、掃除夫やベッドメイクをする人といった仕事をしている人— 単純に自分のアルバイト先で出会った人たちを描いているのですが、彼等は制服などを着ているので、一見して「仕事をしているんだな」と理解できる。そういった人たちが、休憩中とか労働の合間合間の瞬間に垣間見せるちょっとした仕草に、その人らしさを感じたんです。それがその人固有の表現なのだと思い、制作をしました。

——— それでは、具体的に作品を挙げながら解説をしていただきます。掃除夫とモップを題材としている『Good counseling』 *1 を説明していただけますか。

福永 これは僕の設定なのですが、この掃除夫は、毎日同じ場所を、同じように掃除している。この人の日々の楽しみは、普段から仕事で慣れ親しんでいるモップに悩みを相談するというか、コミュニケーションをとることが、この人にとって心のより処になっている。だからタイトルがいる『Good counseling』なんです。休憩で仕事を離れる時に見せる、個人的な瞬間。

——— なるほど。すごくプライベートな瞬間を描いているのですね。他の作品もご説明いただけますか。

福永 『private orchestra』 *2 いう作品がわかりやすいかもしれません。このタクトを持っている人が何の仕事をしているかはわからないですが、舞台になっているのはホイール屋さんですね。段々に積まれているホイールが、ステレオのスピーカーみたいに見えたというのが、最初の自分のイメージとしてありました。登場人物の男性は、タイヤが歌っているように見えたんでしょう。それで夜な夜なその場所に行って、自分でタクトを振って、タイヤのオーケストラを作っている。それがこの人の密かな楽しみになっている。

——— それは、今回の個展のタイトル「何かを味方にすること」というテーマにも関係しているように思えます。福永さんはこのテーマについて「人がそれぞれ拠り所にしている領域での振る舞い、例えば仕事だとか、休憩中のある瞬間に自分に何かを憑依させて『味方にする』ことで、人間が豊かに生きていけることを描きたかった」と述べられています。この『private orchestra』に登場する男性の生き様は、まさにこのタクトを振っている瞬間に現れているといえるでしょうか。

福永 そうですね。この人にとってタクトを振るという行為は、趣味とも違って、より根源的というか、この人の生活のモチベーションを維持する為の行いなんです。その姿を描いているのです。

——— 福永さんは、実際にこの行為を見たことがあるのですか。

福永 見たことはないです。最初に僕がホイール屋を見たときに、ホイールの形が面白いし、それがスピーカーにも見えて、ホイールの羅列してある感じが劇場っぽく見えたんですよね。ここでオーケストラみたいなのをしている人がいるんじゃないかな、といった想像から描いています。

——— これらとはまた違った雰囲気の『ピース』 *3 についてもお話を伺えたらと思います。

福永 うーん、これはちょっと違うんですよね。イメージとしては、3人のキャラクターがそれぞれあって、上で双眼鏡を覗いている人は、周りを警戒しながら見ている感じです。右下の人は、ナイーブというか、内向的。左下の人は、希望を持っていて、ポジティブな人です。先に触れた『Good counseling』や『private orchestra』の登場人物たちとは違って、『ピース』で描かれている3人は何かを行っているわけではないです。3人だけで成立しているという意味で、象徴的な絵だとは思います。ちなみに、右奥に描かれている遊園地はサンリオピューロランドなんです(笑)。アミューズメントパークのような人工的な場所から離れて、この3人だけで成立している世界。そこでいい時間を過ごしている。そんなイメージです。

——— 同じく3人の登場人物がいる『MATE』 *4 にも違ったニュアンスを感じます。

福永 これはもっと生活感溢れるというか、アルバイト先の仕事の合間に談笑している人たちの姿を描いているんです。それが、場末の雰囲気というか、バーであったり、クラブであったり、そんな場所で話をしているようなイメージというか。そんな風に見えました。でも、この人たちにとっては、この談笑の瞬間が、いい時間になっている。

——— いい時間の過ごし方は人それぞれで、福永さんはそれを描いているのですね。そして、どのポートレートも、非常に大きなサイズですね。そこに意図はあるのですか。

福永 サイズはその絵のイメージに合った臨場感が最も良く表せるサイズを選んでいます。実際のモチーフよりちょっと大きかったり小さかったりするほうが、リアリティが出ると思うんですね。『Good counseling』のモップも、だいたい実物大くらいだと思います。こういったモチーフを小さなサイズで描いたら、ミニチュア的になってしまうんですね。臨場感が失われる。

——— テクニックについて質問します。福永さんの作品には独特の雰囲気がありますが、それを出すための技術的な工夫はありますか。

福永 自分が作品をよしとする判断は色と質と形が合致した表現になっているかどうかです。そこがOKを出せるかの判断基準になっています。あと、タッチの意識はしていますね。前回の個展(『Local Emotion』、2008)から反省しているのは、絵のタッチに対する意識なんです。タッチの的確さというのはかなり意識しています。一層目から形に沿ったなタッチを心かけて積み重ねています。その上で、色や質がともなってきたときに、画面が決まったという実感がある。

——— 的確なタッチというのは、モチーフの質感表現として的確なタッチという意味なのですか。それとも、福永さんのイメージに対して的確なタッチという意味なのでしょうか。

福永 そこは両者が重なり合う部分があると思うのですが、どちらかといえば自分のイメージに対して的確かどうかが重要ですね。

——— (観客の方からの質問)
作品の時代背景などがあれば教えてください。また、外国の方をモデルに描かれているのでしょうか。

福永 時代背景は、全て現代ですね。自分が感じるものは、現代だと思うので。『HoTEL Woman』 *5 のモデルの女性は、黒人の方ですが、他の作品は違います。『Nice approaching』 *6 という作品を見ていただければわかりますが、衣装は足袋なんかも履いていますし、現代の設定ですね。ただ、現代の制服みたいなものは、記号的な感じになりがちなので、避けるようにしています。

——— (観客の方からの質問)
ドローイングはペインティングの下絵として描かれたものですか。

福永 そういったわけではありません。例えば、廊下に展示してある2枚の『HOTEL WOMAN』 *7 というドローイングですが、そもそもあの作品をペインティングにするかどうか決めて描いたわけではないんです。とりあえず、彼女に出会った体験がとても気になっていたので、ドローイングとして何枚か描きとめました。その中から選んだ2枚です。

——— (観客の方からの質問)
福永さんの中で、制作において一番大事にしていることは何ですか。

福永 自分が最初に感じたイメージは、絶対に形にしなければならないものだと思っています。それは、途中では変えません。最初のイメージに、何かを付加していくのは、ありだと思うんですけれど。その上で、自分でもいい意味でわからないような、最初持っているイメージを超えるような作品になることもあってそれもベストだと思っています。

福永大介 interview January, 2011

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
  • Kei Okano :works
  • Ikuhiro Watanabe :works
Exhibition Data
福永大介 展 何かを味方にすること
2011.01.22 - 02.26
小山登美夫ギャラリー東京 7F
  • インタビュー 参照画像

 福永大介 :Archives