Artist Interviews

福井 篤 インタビュー  2009年

福井 篤 アーティストトーク 2009 installation view from [ I See in You ] at Tomio Koyama Gallery, 2009

► このインタビューは、オープニング(11月28日)当日、ギャラリーで行われた[アーティスト・トーク]の模様を編集したものです。

——— 小山登美夫ギャラリーでの個展は、今回で4回目ですね。
福井さんのペインティングは、1つの物語の挿絵のような印象を受けます。
以前の展覧会では、アルバムのジャケットを描いているような感覚というお話もありました。
今回の新作は、どのような感覚で制作に取り組まれたのでしょうか?

福井 展覧会として統一されたイメージを思いつかなかったこともあって、昔描いた絵と同じ場所を、もう一度描こうかなと思い、まずは、雪の積もっているこの作品を描きました。*1

——— これは、ミュージシャンであるデヴィッド・シルヴィアンの作品 "blemish" のアルバムのジャケットのために描かれた絵(«late night shopping»、2003)と構図がほとんど同じですね。*2

福井 同じ構図で、同じ景色なんだれど、登場人物だけ変えました。
もともとはドローイングでしたが、一度ペインティングにしてみたかったので。

——— ドローイングからペインティグを描く中で、どういった変化を感じられましたか?

福井 元の絵があって、しかも元の絵をすごく気に入ってたもんだから、なかなかいい感じにできなかったです。
同じ構図を使っているのに、結構苦労して、時間がかかりました。
はじめにドローイングで紙に描いたときは、迷い無くすぐに完成したのですが

——— この作品の次に描かれた作品は、どれになりますか?

福井 DMにもなっている、女の子の絵(«夢遊病»、2009)です。*3

——— 今回は女の子に代表されるように、人物がたくさん出てきてますね。

福井 やはり、人間が出てきたほうが、描いていて楽しいというのはありますね。

——— それぞれのキャラクターは、まったく違う世界に生きているのでしょうか?

福井 それは…自分でもわからない。

——— 初めて発表される、新しいタイプの、10枚組のマンガのようなドローイングもあります(«teenage ghosts - interceptors»、2004 - 09)。*4
制作期間が5年間とありますが、これは長い時間をかけて、ずっと制作をされていたのでしょうか。

福井 そうです。
もともとは、あるフリーペーパー用にマンガを描かないかと誘われていて、そのフリーペーパー大くらいのサイズで描き始めたんです。でも、その話がポシャっちゃって、宙ぶらりの状態で途中まで描いて放ってあったんです。
そのまま、発表される機会もなく5年くらい経ってしまっていて、そろそろフリーペーパーの話も時効だし、いま出さないと永遠に埋もれてしまうような気がしたので、今回出すことにしました。

——— このドローイングは連作ですが、1枚の中にも、たくさんの要素やアイデアが緻密に描かれています。サクサクと描き進めることができるのでしょうか?

福井 うーん。描ける時もあり、描けないときもある、って感じですかね。

——— 初めて完結できたマンガなのだそうですね。昔から、こういったドローイングを描かれてきたのでしょうか?

福井 中学生くらいからマンガを描いていたんだけど、描写のスタイルとしては昔からあまり変わっていないと思います。
でも、40歳を過ぎて、初めて完成することができました。

——— 今まで描かれたマンガは完成したことがなかったのですか?

福井 ないです。

——— お話を考えるという作業が大変だったのでしょうか?

福井 ストーリーテリング能力に欠けるから、今までマンガを描くことを諦めて、1枚の絵を描くことになってしまっていたのかもしれない。
このマンガは、近所に住んでいた知り合いに影響された面もあるんです。
太田アキオさんという、前に住んでいたビルの隣の部屋のイラストレーターの方がウェブサイトで当時公開していた、ウサギのかぶり物をした女の人のFlashムービーがあって、それを見た後に描き始めたのですが、初めは影響されていること気づかなくて、ある程度描いてから「これってあれじゃん!」みたいな感じで思い出して。それで、作品を発表するにあたり、断りを入れました。クレジットは、作品の隣に紙で張ってあります(Rabbit House, http://www1.ttcn.ne.jp/~rabbitkix/index.html)

——— マンガのシリーズは、この他にギャラリー2にある3枚組のものや、白黒の4枚組のものを今回発表されていますが、これからも続けて制作はされていくのでしょうか?

福井 構想はありますよ。
少しずつ関連しながら、違う話や、短い話ができないかな、と思ってます。それが集まると面白いかな。

——— 展覧会をすると決まったときに、どんな展示になるのかを、まずイメージしてから作品の制作をはじめると伺いました。
具体的にはどのような方法なのですか?

福井 展覧会が決まったら、当たり前ですけれど、絵を描かなければならない。でも、イメージは簡単には出てこない。
それで、未来を見る、というか、頭の中でタイムトラベル的に展覧会の前日の光景を思い浮かべるんです。
作品が全て完成していて、もう壁に絵が展示されているという状況ですね。
それを見て、こういう絵があるんだ、おおー、といった感じで。(笑)一種の透視というか、ズルをするような感じなんだけど、結局は自分の絵なので。
そういう、想像した未来で見てきたイメージを想起して描き始める。そんなやり方ですね。

——— (観客の方からの質問)
未来で見てきたものと、現実にできあがった作品は、どれくらい違っていますか?

福井 全然、違うものになりました。もともとはこういった展覧会になるというヴィジョンは見えていなくて、もっとごちゃごちゃしたドローイングがたくさん展示してあるものになると思っていた。
内容としては、自分が愛する80年代のインディー・ギター・ポップに関するものや、60年代のハーモニー・ポップスに関するイメージとかで、そのドローイング群と今回展示しているマンガと、さらに、それらとは関連のないペインティングを脈絡なくごちゃ混ぜに展示しようと思っていた。
でも、描き進めていくうちに、それはちょっと違うなあ、と思って。結局は想像した未来とは違うものができあがりました。

——— (観客の方からの質問)
今回の展覧会タイトルの『I See in You』というのは、どんな意味が込められているのですか?

福井 えっ!?(笑)具体的に何なのかっていうのはないです。
甘く切ない感じというか、ロマンティックな感じにしたかったというか。それを探して、たどり着いた言葉ですね。
本当はもっとあるんだけど、プライベートな話題過ぎて、ここでは言えません。

——— (観客の方からの質問)
新しいスタイルが生まれつつある印象を受けました。
以前の作品に比べて、人物が主体になっています。
過去の作品に見られたような、極端な構図が少なくなっているのではないでしょうか。

福井 以前の、箱庭的な、見立てみたいな絵を描いていたころは、感情が乏しい絵でした。
でも、少し飽きてきて、人物が出てきて、より感情的な絵になってくると同時に落ち着いた構図をとるようになっていました。
理由は…わかりません(笑)

福井 篤 interview November, 2009

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
  • Photo / Kei Okano:installation view
  • Ikuhiro Watanabe :works
Exhibition Data
福井 篤 展 I See in You
2009.11.28 - 12.19
小山登美夫ギャラリー東京 7F
  • インタビュー 参照画像

 福井 篤 :Archives