Artist Interviews

エイミー・ベネット インタビュー  2009年

エイミー・ベネット アーティストトーク 2009 installation view from [ Vacationland ] at Tomio Koyama Gallery, 2009

► このインタビューは、オープニング(11月28日)当日、ギャラリーで行われた[アーティスト・トーク]の模様を編集したものです。

——— インスピレーション

ベネット この展覧会の作品は私の"湖のシリーズ"の中で最後の作品です。
これらの作品は、2年前にニューイングランド州の湖や小川をボートで漕いでいる時にインスピレーションを得て出来たものです。
私は、この時ボートの中から、静かに海岸にいる人々や家を眺めていました。私には陸があたかも「経過していく場所(passing stage)」 であるかのように映り、とても魅了されました。
人々が普段見せ合う自意識を持つ事無く、とても自然にそして正直に振る舞い、関わりあっている様子を見る事が出来ました。
この経験は私にジョン・バンヴァードの「ミシシッピ」という作品を思い出させました。
この「ミシシッピ」という作品は、座っている観客の前で作品をスクロールさせ、まるでボートに乗って川を渡っているかの様な気分にさせるという作品です。この手法は1800年代の後半、人々を楽しませました。
また、私はジョゼフ・コンラッドの『闇の奥(Heart Of Darkness)』を思い出しました。この作品は、ある旅人がコンゴ川をボートで渡りながら岸を注意深く見つめ、森の中の「未開の地」を覗く、という話です。
私は、今回のこのシリーズの準備の為にこの作品を読んだのですが、ジャングルのミステリアスな性質が大変良く表されていて、これらの性質を私のペインティングでも出す事ができないか、と思いました。
湖という設定は数々のナラティブ、シナリオ、そして雰囲気を与えるので私はスタジオで湖のモデルを作ってみようと決めました。

——— 模型の設計

ベネット 私は2ヶ月間かけて、4m x 1mのベニヤ板でL型に作った箱の中に模型を作りました。発砲スチロールでできた大地、ワイヤーと泡でできた木、樹脂でできた水、そして背景に空を描きました。
その中には、ほかにも小屋やキャンプ場、そして家、等もありますが、あくまでも中心は風景です。
それは、かすかに私が育ったアメリカの北西部を思い出させますが、これはあくまでもフィクションで想像上の場所です。
スケールはHO か1/87で、特に鉄道の模型に使われるものです。鉄道模型用の小さな人物フィギュアがたくさんあるのですが、多くは列車の旅をしている時のポーズをとっているので、私はそれをいったんカットして、とらせたいポーズにしてもう1度つなぎあわせ、ペイントします。たまに、スズのフォイルに色を塗り登場する模型のために洋服やアクセサリーを作ったりもします。私は小さいスケールのほうが好きで、なぜかと言うと、表情や洋服の特徴が曖昧になるけれども、ポーズやジェスチャーの意味は表れるからです。

——— 模型の目的

ベネット 模型を設計するときに、自分が作ろうとしている世界のあらゆる側面を考えなくてはいけないのですが、私は、その考えるというプロセスの中でペインティング作品に対するアイディアを得るのです。
そして、私は三次元的にそのアイディアを遊ぶ様に、最も面白いシーン、ライティング、そして視点を探すのです。
私は作品を見ている人々が、ボートの中から、もしくは水面の上を飛ぶ鳥の目線などで、海岸線で何がおこっているかを目撃しているように感じる作品を作っています。
"Heat" *1 、"A Change of Scenery" *2 そして"Losing Heart" *3 等がその良い例です。多くの画面は、共通の水平線を共有しています。

風景をアレンジし、光を当てたら、まずジオラマを静物(still life)として見、そこに見える生命(life)を描き始めます。
まず私は1ヶ月程かけて、いくつもレイヤーを重ねながら、それぞれのイメージを描きます。
私は、「実際にありそうだけど、実は人間の想像の中にしか存在しない様な風景」を描いています。なので、人工的な雰囲気をより出す為に、つや感のある仕上げにしています。
このシリーズに使われた模型は、私が描きたい風景に合わせて変化しています。
私は模型を展示する事には全く興味はありません。というのもそれぞれの作品に合わせて変化させるのはとても大変だからです。今はそれらの模型は、雪を表現する為に使用した重層にまみれています。N.Yに帰ったら、もう一度模型を組み直して、部分部分を次の作品に使う予定です。
実際、この湖のモデルに使用された木と発砲スチロールは以前の「郊外の地域(supurban neighborhood)」を描いた作品で使った模型を再利用しています。

たくさんの人々が、私の作品の中に「映画的な要素」を見いだしますが、確かに私はコーエン兄弟、デヴィット・リンチ、ヒッチコック等に非常に影響を受けています。"Shootout" *4 や"Night Fishing" *5 は私のこの影響が一番見られる作品ではないかと思います。
映画を制作する人々もまた、セッティングやライティングをコントロールしながら衝撃的な効果を出そうとしています。
しかし、ペインティングで同じ事をすると、それ以外に「時間を圧縮する」という更なるチャレンジ、また描くのに最も重要な瞬間を探し出す、という課題が出てきます。
私が描く瞬間は、「まさに何かが起りそう」や「ちょうど何かが起った」という気持ちを伝えるものです。

——— 反射と湖

ベネット 水を描くことは、大きな挑戦でした。私の模型の中では、陸地の風景が完全に逆さまに映る様に、平らな樹脂を使います。そこでは波による歪みなどは起こりません。私は自分が思った以上に、この平らな水の効果で得られる静けさというものに魅了されてしまっていました。ですから、完全に静止している模型の水の姿はあえて描かない、というところに、本当の私の挑戦があったのです。
陸地の風景がどのように反射し、またどのように形を変えていくかこそが、作品の中の物語や雰囲気に大きく影響を与えます。
水は、気候を示唆するし、水面下で起っているものを隠すこともあるし、また水面が反射する色が、作品全体の雰囲気に影響を与えます。
湖というのは、孤立した空間で、そこでは世界がさかさまに映り、水という物質の開放感は同時に熟慮と内観を表現します。
登場する場面達は休暇の目的地で、人々が公共の場で裸になったり、文明の中での負担から解放されてリラックスして楽しめる 環境です。
また、家族が集まり、良かれ悪かれ、濃い時間を一緒に過ごす場所であったり、時には、キャンプに集まった人達が短い間でも自然とつながり、近代の便利な生活の前の時代を想像する事ができる場所です。
また、冬になるとここは、少しの元気な現地の人やアイスフィッシング用の小屋を除いては誰もいなくなってしまう様な場所です。

——— 絵画の中の物語

ベネット 作品の中には、個々にお話がありますが、それらは完全なものではありません。私の絵には、特別な感情を引き出したり、見る人に、自分自身が世界に現れる前の、あるいはそのあとのことについて、考えるように刺激するような瞬間を、捉えてほしいと思っています。
全てのシリーズを通して、家々や風景の一部は数回描かれています。私は時間を超えて、何度もキャラクターを登場させて、場所に歴史を与える様な形でストーリーを伝える事が好きなのです。

これらの絵で、私が探求したテーマは孤独や移り変わり、そしてまたお互いに共存し、関わり合おうとする人々の不器用な姿です。過ぎ去った時間や、私たちの存在がはかないものであることを思い起こさせる、季節の移ろいが持つ効果についても考えました。

この展覧会では、一番小さい作品、"Drifters"(放浪者) *6 の様に風景に接近した作品や森の風景の作品も展示しました。
広い風景ばかりを作品にしていた後では、私にはそれらはまるであたかも室内であるかの様に感じられます。
それらは、屋外空間であるにも関わらす、私にはどこかもっと私的で親密に感じられます。
実際、"Heaven Helps Us" *7 では、屋外のチャペルに様々な欲をもった人々が集まり、精神的なつながりを求めている場面を描いています。
また、"Faking it" *8 では、屋外で座っている子供たちのグループがある種の部屋の様な空間を作り出しています。
同じ様に、"A change of scenery" *2 では、目隠しをした大人の女性達が森の中の日の当たる、開けた場所で遊んでいます。
"Heat" *1 では、夏の終わりの夕刻に、休暇を過ごしている家族が、それぞれ心地よい空間を過ごそうとしている様子に表れる「人々の繋がり」を表現しようとしています。
そして同じ様な感情は"Losing Heart" *3 にも表現されています。

interview November, 2009

  • Interview by Tomio Koyama Gallery
  • Photo / Kei Okano:installation view
Exhibition Data
エイミー・ベネット 展 ヴァケーションランド
2009.11.28 - 12.19
TKG Contemporary:小山登美夫ギャラリー 6F
  • インタビュー 参照画像