色々なものが綺麗なバランスで絵に散りばめられていたら
美しいものになるんじゃないか、そう思って描いています

まずはペインティングについてお伺いします。最初に描かれたのは"氷の物語"ですね。この作品は今年の春に行われた「Project N33」(東京オペラシティアートギャラリー、コリドール、2008年)の展示が終わるとすぐに描かれたとお聞きしました。

はい。春なのに、これから夏になろうとしているのに、冬の絵が描きたくなったんです。

中央に座っている女の子は、今回展示されている他の絵にも度々登場しますね。この女の子はご自身なのでしょうか。

いいえ、自分ではありません。

いつも頭にあるイメージなのですか。

はい。私の作品にはオオカミや馬、羊、リスといった動物がいっぱい出てきますが、そういった動物のポジションと女の子のポジションは同じなんです。「人間だから特別」みたいな感じではないんです。私の絵に同じ人は出てきません。皆、それぞれ違うキャラクターたちです。

この絵にお話はありますか。

この子が絵本を読んでいるんですけど、絵本は白紙なんですね。白紙なんですけど、この子は読んでいるんです、お話を・・・というお話です(笑)雪も白いし、絵本も白紙。だけど物語はいっぱいあって、女の子だけ、その物語を読んでいるんです。

絵の中ですごく描き込んである部分と、サラッとしか描いていない部分があって、必要な部分だけ描いたらすぐ次に、というスピード感を感じます。背景のほうがメインと言ってもいいくらい非常に描き込まれていて、逆に、下のほうのモチーフはサラッと描かれていますね。

絵全体を見渡した時に、眼が気持ち良く絵をまわれるように。全部ガーッと描いたら、ちょっと胃もたれしちゃうじゃないですか。色々なものが綺麗なバランスで絵に散りばめられていたら美しいものになるんじゃないかな。そう思って、いつも絵を描いています。「こいつを主役にしたら良い絵になるぞ」と考えている訳ではないんです。

氷の物語, 2008氷の物語(detail), 2008

L to R: "氷の物語", 2008、"氷の物語"(detail), 2008、oil on canvas / 182.0 x 228.0 x 3.0 cm © Tomoko Nagai

この作品の次に出来たのはどの作品でしょうか。

"緑のなかで眠る"です。季節が春だったので、季節に合わせて爽やかな緑色が描きたくて。

女の子のお話はあるのでしょうか?

女の子のお話? そりゃあもう、見たらわかりますよ! 気持ちいい感じで寝ているの・・・それだけ(笑)。寝ている作品が多いのですが、気持ちいい絵や場所を見たりすると、眠くなるんです、私自身が。きっとそれが大きいんだと思います。みんな寝ているの(笑)。赤ちゃんがよく着る動物のパジャマを着て、頭だけ着ぐるみを脱いでいます。

森の中の絵というのもこれまでに多く描かれていますが、自分の中でその森の世界というのは、繋がっているのでしょうか。

基本的に自分で描く絵の世界は、大きな世界が私の中で縮まっていって、一つに繋がったものです。

それぞれの場面が各作品に出てくるんですね。この"銀色に輝いた女の子"からはちょっとスペーシーな、宇宙っぽい感じを受けます。

スペーシーな絵も時々描いてます。森や部屋は見たことあるものですが、宇宙規模的なことになってくれば、100%想像で画面をつくりあげます。なので、私的な憶測で描いてます。

緑の中で眠る, 2008緑の中で眠る(detail) ,2008銀色に輝いた女の子, 2008

L to R: "緑の中で眠る", 2008、"緑の中で眠る"(detail), 2008、oil on canvas / 131.0 x 194.0 x 3.0 cm  "銀色の女の子", 2008、oil acrylic, color spray on canvas / 194.0 x 161.5 x 3.0 cm © Tomoko Nagai

今回の展示でいちばん大きい絵、"白い馬からの贈りもの"は、2枚の絵が組み合わされていますが、アトリエでは1枚ずつ描かれたのでしょうか。

いいえ。ぎりぎり2枚繋げて描いていました。この絵は描くものがバッチリ決まってから描いたんです。馬が出てきて、ピンクで、ふわふわしたファーのカーテンが掛かっている劇場を描きました。
自然現象ではあり得ないのですが、空にカーテンが掛かっている、リアル劇場です。最初は頭に大きな色面が浮かんで、それをバッと色でつくってしまって、それから小さなモチーフたちを散りばめます。上はピンクで、とか、草原とか、大まかな設定でもあり、色面でもあることを決めて、それから富士山が見えるよ、とか。

ふわふわの尻尾みたいなのもカーテン?

体育館とかで学芸会をやる時に、四隅にあるじゃないですか。それのファー・ヴァージョンです。緞帳?っていうんですか、大きいカーテンを束ねているものが、ファーで出来ている、という。

劇場のような空間を描いているにも拘らず、劇場で上演されている物語が強く打ち出されていないのが不思議ですね。

ええ、この人たちは皆自由なので、何をしても良いんです。私の絵の中では、みんな基本的にリラックスし過ぎで、みんなくつろいでいて、家のクッションで休んでいる感じかな。

作品にはところどころ日本的なモチーフも混じっていますよね。富士山、お母さんの書、というように。

はい、日本が大好きです。

白い馬からの贈り物, 2008BONSAI, 2008

L to R : "白い馬からの贈り物", 2008、oil acrylic, color spray on canvas / 227.5 x 364.0 x 4.0 cm  "BONSAI", 2008、oil acrylic, color spray on canvas / 294.0 x 293.0 x 3.5 cm © Tomoko Nagai © Tomoko Nagai

"BONSAI"も2枚の組合わせの作品ですが、こちらは長方形ではない、変形ですね。最初からこの形でイメージするのですか。

はい。例えばこの絵のモチーフは盆栽なので、最初から横長にしようと思ったんです。でもただの横長よりは、以前小さいキャンバスで一度やってみた事があるように、4枚くらい繋げたのをまたやってみようと思って。いつもと違う感じです。気分も新たに描きました。

このモチーフ全体が「盆栽」なんですよね。

はい。

様々なドールハウスがくっついています。

幼い頃から盆栽が大好きでした。お父さんが育てていたのですが、その盆栽に人形をチョンとくっつけたりして遊んでいて、それがすごく楽しくって。だから盆栽を使ってドールハウスで遊んでいるような感覚で描いていました。

人形遊びも昔からお好きだったのですね。

はい。シルバニア・ファミリーとかリカちゃんとかみんな合同で、ごちゃ混ぜで遊んでいました。小鳥をいっぱい飼っていて、雛から育てていたのですが、その雛たちもドールハウスに入れて遊んでいました。雛をベッドにのせたりして。今思い返すとかわいそうだったかも・・・(笑)。

鳥の部分は非常にリアルですね。ウサギの横顔も。とても描き込まれているようですが。

非常に身近なもので、頭にインプットしているので、見ないで描いています。

昔から繰り返し描かれていたのですね。子供時代から絵を描くのが好きだったのですか。

はい、好きでした。お母さんが絵を好きだったり、おじいちゃんが絵を描いていたり、子供の絵画教室に通っていたり。絵が身近にあったから、自然な流れだったような気がします。

絵を描く事以外には、どういった事がお好きなのですか。

子供の時は漫画を見たり、アニメを見たり、普通の子供でした。勉強は全然しない・・・(笑)

本の挿絵の仕事もされていますが、本をよく読まれるんですか。

本は滅多に読まないのですが、たまに(自分のなかで)ブームがきた時に読むかな。宮沢賢治が好きです。文章の描き方や、綺麗な感じが好きです。

挿絵を依頼される方は、きっと長井さんの絵に物語性を感じていらっしゃるのでしょう。

見てくれた人がそれぞれの解釈で物語をつくってくだされば、それは素晴らしい事だと思います。

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008 © Tomoko Nagai

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