描く時、小さい筆でずっと最後まで描くので、
1本の筆のストロークが単位(笑)

こちらの作品("冬の海と霊園")では山が登場しています。あれは山?

山です。

そして風船が沢山飛んでいる。

風船というか、本当は雪を描こうと思っていたんですよ(笑)「いずれ雪っぽくするんだろうな」と思いながら、下地でポヨポヨ塗っていたんですよ。いろんな色があって楽しいな〜って。そしたらそれがずっと消せなくなっちゃって。

丸い形態は下地なんですね。

はい、僕にしたら(塗りが)薄いんですよ。

どのように色をのせていたんですか。ラインで?それとも適当にベチャ・ベチャ・ベチャという風に?

最初は雪、ということで楽しく丸を描いていました。後は全体を見て足していって。本当はもっと色が強かったんですね。もっともっと全部色が付いていたんです。それを消して。

こういう風な描き方は普段からされているんですか。

最近の空の描き方はずっとこんな感じです。カラフルになっている。最初にビャッビャッと雲のようなものを描いてから、後から上に白をのっけていく。綺麗に見えている色、ヴィヴィッドな色は全部一層ですね。

冬の海と霊園 Winter Sea and Graveyard, 2008冬の海と霊園 Winter Sea and Graveyard(detail), 2008冬の海と霊園 Winter Sea and Graveyard(detail), 2008

image L to R:"冬の海と霊園 Winter Sea and Graveyard", 2008 / oil on canvas / 181.8 x 227.3 cm "冬の海と霊園 Winter Sea and Graveyard" (detail), 2008 "冬の海と霊園 Winter Sea and Graveyard", 2008 / charcoal on paper / 65.5 x 82.5 cm © Toru Kuwakubo

この作品はまた明るい色に戻ってきた感じですね。

そうですね、この作品は明るいです。この中ではわりと最近に描いたものです。この作品も本当はもっとどよ〜んとした感じで描こうかなと思っていたんです。あそこにあるドローイングのほうが当初のイメージに近いですね。静かでボワッとしている。

ペインティングの方は、色は明るいけれども、地球最後の日にみんなでどんちゃん騒ぎ、といった負の部分と奇妙な静の部分を感じます。

はい、どんちゃん騒ぎです。僕のお母ちゃんの所にお墓参りをするんですけど、お花がいっぱい飾ってあったりして、お墓って綺麗だなってずっと思っていました。山に囲まれた墓地なので、向こうに守られるものがあって、ただただそれだけ。

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ペインティングを描かれる時には常に、ドローイングも描かれるんですか。

毎回という訳ではないです。小さい作品ではドローイングは描きませんね。僕、大きい作品を描くのは今回が初めてなので、ある程度固めていかないとミスが取り返せないんです。乾くと絵の具をのせられなくなってしまうんですよね。短時間の内にダーッと仕上げないと。そうやって一気呵成に描いているから、大きい面積で切り替える、やり直すということは出来ないんです。

ウォームアップという感じで大体筆を置く順番等を決めてから「本番」を描く、というような感じなのでしょうか。

まだ大きい作品に慣れていないというのがあるので、そうですね。小さい作品だとわりと遊びながら「ここはこうしたい」という余裕があるんですが、大きい作品の場合壊すだけでも時間がかかってしまう。

やっぱり描き足したい、と思って描き足されることはありますか。

ありますよ。ただ、例えば新たな建物を描き足そうと思った時、それが小さければ出来るけれど、マチエールがあるから筆がババババッとなってしまう。それも面白いですが、ちょっと気になる時があるんですよ。僕の絵は基本的に一層なんです。全部が固まって層になっていて、下の色と混ざって色になるから、パレットみたいなもんですよね。

さまざまな色を作っておいて、例えばこの色はここに散らしたらこっちにも散らして、というように、色が散っている所は全部同時に色を置いているのでしょうか。

全部同時です。今回、もっといろんな描き方があることに気づきましたが・・・・・・。

失敗した時はキャンバスも捨ててしまうんですか。

捨てはしませんが、全部はがしてもう一回やり直します。

バベルと果実 Babel and Fruits, 2008バベルと果実(detail), 2008バベルと果実(detail), 2008

image L to R:"バベルと果実 Babel and Fruits", 2008 / oil on canvas / 194.0 x 259.0 cm "バベルと果実 Babel and Fruits" (detail), 2008 © Toru Kuwakubo

「バベルと果実」ですが、気になるモチーフが沢山ありますね。

バベルの塔は有名な話ですよね。言語が出来る時の。高い塔もまた彫刻のイメージなんですよね。高い所、理想を目指して行くんだけれども、「上手くいかないよな」って。本当は木がある絵を描きたかった。途中からこれは失敗しても入れようと思っていたんですよ。でも木というか、どちらかというとビルの桟みたいになってしまって。「これでいいや、どちらでもいいし」と思いました。上の方からは、葉が垂れて来ているようなイメージです。ゴーギャンの絵でも「死ぬまで」みたいな絵がありますよね。僕らはどこから来てどこへ行くのか、って。中心には林檎を持った人物がいて、アダムとイヴを連想させる。何かが変わっていってしまうんじゃないか、という。

オブジェはそれぞれ、色々な建築様式のバベルの塔なのでしょうか。

そうですね。

全て実在する建物ですか。

いえ、ミックスしたりしています。

右側の建物はロンドンの?

えーと、あの有名な建物(通称・ガーキン)です。低いバベルの塔もあります。あっちは有名なドバイのホテルで、これはエアパッキンです(笑)テート・モダン+グッゲンハイムもあります。

次にこういう絵を描いてみたい、という構想はありますか。

まだ次の事は考えられないですね。

今回の個展用というのから離れて、やってみたいことは?

大きい作品というのが、僕にとってのチャレンジです。突拍子も無いチャレンジが出来ないですね。まずこの大きさで今まで描いた事がないから、これがチャレンジです。大きいだけでチャレンジ(笑)。
小さい作品では、好きなことが試しやすいですね。小さい作品でやっていたことが大きくなるとどうなるか?というのもチャレンジですし。中ぐらいの作品は楽しいです。

それは自分で全体を管理出来るから、コントロールしやすいから?

そうですね、それが一番近いです。僕はどうしても小さい筆で描くので。今後はどうか分からないけれども、今は大きな刷毛でバーッと塗る事がない。何かを描く時、ずっと最後まで、1本の筆のストロークが単位(笑)。

だからこそ小〜中サイズの作品の場合は、自分で実験してみたいことがすぐに実現できて、やりやすいんですね。

はい、そうです。同じ黒でも綺麗に塗りたい自分と汚く塗りたい自分がいて闘っている。平筆なんかを使って塗ると、すごく綺麗に塗れてマットな黒になるのは分かる。でも、それなの?いつでもそうすることは出来る。塗り潰しちゃえる。そうやってずっと葛藤しながら塗っていたんです。調整はしているんですけれど、失敗しちゃえばいいやって。

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008, 2007

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008(gallery2) すべて "Citizen with the white box", 2008 / oil on canvas / 45.5 x 33.3 cm © Toru Kuwakubo

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008(gallery2) すべて "Citizen with the white box", 2008 / oil on canvas / 45.5 x 33.3 cm © Toru Kuwakubo

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