装飾性があって神聖なもの、「美しい」が研究テーマです

まずは基本的な作品制作の過程についてお伺いしたいと思います。普段から写真を撮りためていらして、それを一回パソコンにとりこんでコラージュし、最終的に印画紙に出力されるのですね。

はい。

普段、写真はフィルムで撮影されますか?

いえ、今はデジタルカメラです。写真を撮ること(記録)が大事で、写真自体のテクスチャーや肌合いみたいなものはあまり考えていないので。カメラの機能にあんまりこだわらず、普通にデジタルカメラで撮っています。

普段行動している範囲だとか。

そうですね。でもまあこういうものが見たいなあと思ったら撮りに行く時もあるし、もう一回やっぱりとっておこうとか、撮り直そうとかも、実はあります。

でもそのために旅行に行かれるようなことは、あまりないのですね。

はい。目的が別にあってどこかに出かけた場合がほとんどです。それが一番いいみたいです。また作品用に風景を見たいなあと思い、出かけるときもあります。

カメラをいつも持ち歩いていらっしゃいますか。

持っています。デジタルのコンパクトカメラと一眼レフ。以前フイルムカメラで撮影していた時も同じです。フイルムの時はイメージを大きくするので、中判カメラ(120フィルムまたは220フィルムを用いるカメラの総称)のPLAUBELmakinaW67を使ったこともあります。

実際に作品をつくる時は、一回全部データとして取り込んで、組み合わせをして最終的にイメージを決められてから、出力の作業までご自分でされるのですか? 以前スタジオにうかがったら、とても大きなプリンターがありましたが。

大きい、インスタレーション的な仕事をする時はスペースに合わせて大判デジタルプリンターで出力します。紙やキャンバス、など、自分でプリンターを持っていると自由にプリントメディアを変えられます。版画のプレス機の感覚です。
大きな作品をインスタレーション的に制作するのが好きなので、写真としてより絵画的に作業しています。

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008 © Tamami Hitsuda

installation view from On Flowering Images; Contemporary New Photography at Tokyo Metropolitan Museum of Photography, 2004

installation view from "On Flowering Images; Contemporary Japanese Photography" at Tokyo Metropolitan Museum of Photography, 2004
© Tamami Hitsuda

写美(2004年、「新花論」東京都写真美術館)の展示のような時ですね。

写真美術館の時の作品は20m近くもあり、キャノンの総合デザインセンターの吉原さんがサポートして出力してくださいました。アーティストサポートとして今も継続してお世話になっています。
ただ、今回のような仕事は、アクリルマウントをしていますので安定性を考え、Cプリント(カラーネガから焼き付ける一般的な方法)です。

ラムダプリント(ポジフィルムをスキャンしたデジタルデータからレーザー光線で印画紙に焼き付ける方法)などですか?

私は、パワープリント(デジタルデーターをレーザー光により、直接銀塩写真感材に露光する方法)とCプリントを使っています。

最初、今回の展示も壁紙のような大きな出力をするというアイデアもありましたね。

はい。でもここの空間には、作品として独立しているもののほうがいいかなあと思いました。一点一点はかなり大きいです。

確かに大きいです。

幅約3mあります。初めはこの"The Swan"という作品はもっと小さかったので、解像度が心配でした。

大変なこともありましたか?

小さいカメラで撮った時にどれくらいまで大きくできるかなとか、作品にし始めるとそういう物理的なことが心配になります。あっ、と気持ちが動いた瞬間を撮るから、たまたま小さいカメラしか持ってないこともあるんです。いろいろやってきて、経験値からなんとなく大丈夫とは思うのですが。最近、35mmと同じCCDサイズの一眼レフを手に入れたので、新しい写真を撮るのが楽しみです。

普段からモチーフを集めていらして、最終的に、こういう絵だ、と頭に浮かばれるのはどういう時なんですか?

作品をつくろうと思ってイメージをつくっていきます。自然や日常の写真を撮っているのですが、大自然よりアート(芸術)が好きです。技法や構成なども美術がベースにあります。例えば日本の古い絵画やヨーロッパのロマネスクが好きです。前世は中世の人だねと友達に言われるほど(笑)。

元々は絵画を勉強されていましたね。

その時も、すごく自由に絵を描いてるように見られていたんだけど、やっぱり私の中にはロマネスクの影響があったみたい。

淋派とか。

淋派も好きだし、淋派の以前の平安仏画も好きだし、琳派後も。装飾性があって神聖なものですね。「美しい」が研究テーマです!

97年という早い時期からデジタルフォト画像の作品を始められたそうですね。絵画科で勉強してらして、具体的に写真を始められるきっかけはあったのでしょうか。

今もそうだけれど、日常的に自分が気になるものを留める、スケッチするみたいな感じで写真を撮っていました。当時ロンドンで生活をしていて普通なのに違うということが気になっていたのでしょう。コンピュータに対する興味もありましたし。

でも組み合わせたりするのはすごく絵画的な作業ですよね。

そうですね。(作品としての方向性は)それしか考えられないのです。

Floating World, 2002Fibbing 1, 2002installation view from [The Place Without Name] at Tomio Koyama Gallery, 2003

L to R :"Floating World", 2002 / power print mounted on Plexiglas / 100.0 x 74.0cm  "Fibbing 1", 2002 / power print mounted on Plexiglas / 65.0 x 100.0cm  installation view from "The Place Without Name" at Tomio Koyama Gallery, 2003 © Tamami Hitsuda

installation view from [ZINKOMU] at Gallery Yada, Nagoya, 2005installation view from [Henshin Ganbou] at Fukui City Art Museum, 2002

L to R :installation view from "ZINKOMU" at Gallery Yada, Nagoya, 2005  installation view from "Henshin Ganbou" at Fukui City Art Museum, 2002 © Tamami Hitsuda

Roses in the dark, 2008

"Roses in the dark", 2008
C-print mounted on plexigras
100.0 x 66.0cm
© Tamami Hitsuda

いつも、人工物と、自然とのバランスがすごく面白くて、今回は風景画的なモチーフが全面に出ていますが、以前の展覧会「どこでもない場所」(2003年、小山登美夫ギャラリー)では人工物もフィーチャーされていましたね。

ロンドンの新しい形の観覧車(London Eye)とか、飛行機、カーテンとかですね。今回は、鹿、白鳥、薔薇、噴水、滝、がメインモチーフです。

幻想的で、生活の中のあるようなないようなものっていうところは、今までの展覧会でも共通するところですね。

鹿が神様なんて、幻想でしょ。勝手に思い込んでるだけなんですけどね。そういう、幻想的な象徴を今回は写真の中に取り入れてます。人によっては「あ、バンビがいる」とか、そういうふうに見る人もいるかもしれないけど、それでいいんです。「これはトナカイですか?」でもいいし。

「かわいい!」という受け取り方でもいいわけですね。

もちろんです。一般的に、象徴的なものと捉えられている、すごく特別なものを親しみやすく入れたんです。

その要素は、今までにはないですね。"Roses in the dark"などの、夜か昼かわからないような感じは以前から続いていますが。

そうですね、昼なのに暗い闇。夜なのに、青空とか。

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