Local Emotion
裏側にあるもの、陽の当たらない場所にあるもの

最初に、絵を描き始めたいきさつを聞かせてください。

昔から普通に絵を描くことが好きでした。子供の頃から描いてた。よく漫画の背表紙なんかを真似て描いてたので最初は漫画家になろうと、小学校、中学校くらいかな。
でも、自分はストーリーや女の子の絵が描けなかったし、一つのものなり人間を描いているのが好きだったんですね。しかも絵のほうがずっと向き合えるというか、突き詰められる何かがあると思ったから、絵のほうに行きました。美術のほうに。

野球部にいたのでしたっけ。

いや、バスケ部ですね。中学校。一応キャプテンでした、ダメキャプテン、一勝もできなかった。(笑)

では高校は美術部に入っていたんですか?

高校は美術部に入ってましたけど、なんか居づらくてすぐ行かなくなっちゃって。高校に入ったらさぞいろんな人たちがいるのだろうと変な期待があったのですが、なかなか馴染めなくて、友達ができなかったんですよ。それで高2の時、美大の予備校に入り、そこでいろんな人達がいて、偶然小学校の友達と再会したりしていろいろ価値観を変えられました。今でもそこでの人達とは繋がってますね。

その頃はどういう感じの絵を描いていたのでしょうか。

今、見ると似たようなことをしてますね。いろいろな要素を持ってきて、それで構成するみたいなのがあったんだけど、その当時は技術がなさすぎて、ぜんぜん成立してなかったんだけど。

描きたい構図はあっても。

そうそう。しかもまあ受験だったし。

作品の話に移っていくと、昔の作品からかなり変わってきているなと思います。前回の個展(2006年9月)のときはいろいろな要素を自分で再構築しているというか、前回DMに使った作品"neighborhood garden"(2006)もそうですが、オブジェを自分の構図に従って並べていて、絵の中の異物感みたいなものが強かったと思うのですが、今回の作品は一枚の絵としてこなれてきている、より自然な感じがします。

それは意識しています。前回では、庭とかフォーマットとしての空間があって、そこにさらに自分の気になる要素を持ってきて、イメージの擦れ合いみたいなもので一枚の絵を構築してました。その後から今度は一個一個のモノに集中して描きたいという気持ちが出てきて。たまたまモップが人に見えたというのが強く印象に残ってて、去年は集中して描いていたんですけど。
なぜモップを描こうと思ったかというのは、一つの理由として、今言ったようにものをじっくり描きたいというのがあって。もう一つとしてモップがなぜ目についたかというと、裏側にあるものというか、陽の当たらないところにあるようなものに目がいくというのがあって。そういうところが、自分の中で「ローカル」に感じるんですよ。それが今回の表題になっています。裏側のモップだったりとか、看板の裏側だったりとか、"Tough guys"は資材置き場なんですが、自分の中で何を描きたいかというのが結構しぼれてきた。だからある種唐突なものをもってくるわけじゃなくて、その場所に集中して、その空間の雰囲気を描くというか。

neighbourhood garden, 2006

"neighbourhood garden", 2006 /
oil on canvas / 227.5 x 227.5cm
© Daisuke Fukunaga

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008

installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008 © Daisuke Fukunaga

今回の作品で描かれている場所は、全部実在する場所なのですか。

まあ絵の中に出てきてるモノとか空間も、実際にいろいろあるわけですよ、自分が気になるものは、普段、いろんな場所で目につくし。その時その時の記憶がいろいろ重なって、曖昧になったりもするし、その中から出てきたイメージだったり、総合的になってつくってますね。

そこの場所の写真を撮って、写真を素材にするということは?

そうですね、写真はほとんど見ないですね、最初にそのものらしさを出すのに確認するためには見ますけど。ドローイングは描きます。形態は様々だけど。殴り描きとかいっぱいあるけど。

今回はこの作品("Have a break!")が最初にできていて、こちら("local emotion")に結構時間がかかったという話を聞きましたが、どれくらいかかったのですか?

これは一ヶ月ちょっとですね。

時間がかかったのはどのあたりが?まだ異物感が残ってる感じがしますね。

多分、自分のなかの看板の裏のイメージというのがあって、それは一般的ではないものだから。みんな見慣れていない場所だから、異物感を感じるのだと思います。実際に看板の裏に、こういう焼却炉とか、ドラム缶とか、ベニヤがあったりとかそういうのを見たので、そういうふうに描いているんですけど。

Have a break !, 2007local emotion, 2007-08installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008

L to R: "Have a break !", 2007 / oil on canvas / 259.0 x 194.0cm、 "local emotion ", 2007-08 / oil on canvas / 259.0 x 194.0 cm
installation view at Tomio Koyama Gallery, 2008 © Daisuke Fukunaga

焼却炉も人の頭が付いているような、不思議な形をしていますよね。

そうですね。あれはもうどういうふうに描けばいいかなと思って、2、3回壊したりしてああいうふうになったんですけど。

壊すというのは?

一回描いて、なんか違うなと思って、もう1回白で頭の周りだけ全部バーって塗ったりして。

下の胴体みたいなところは決まっていて。

そうですね。

柿の実みたいなのは、柿ですか?

柿です。実家にもあります。

"日だまり"も、ちょっと前の作品の畑にCDがある"畑の戦士たち"を思い出させる作品ですね。

ちょっと絵の具が生っぽいからかもしれないですね。
"local emotion"の柿の木とヤシの木はすごく描きたいと思っていて。すごくローカルを感じるんですよ。絶対あるんですよ。ヤシの木と柿の木って。

ヤシの木というのは、ここに描いてある木のことですよね、幹に毛が生えてるような。それはソテツですね。

そうです、そうです。ソテツって言うんですか。南国にある木と思いきや、どこにでもある。 しかもあまり日本っぽくないじゃないですか。ちょっと南国っぽいんだけど、でもローカルというか。すごい田舎のほうによくあるんですよね。

ソテツがあると、ちょっと気持ち悪い感じの庭になりますよね。

そうですね。垂れ下がりすぎてると。でも、僕はほんわかした印象ですけど、平屋にソテツのある庭。いいですねぇ。

みんな今の話から、ローカルな風景を思い浮かべてしまいそうですね。

そのローカルっていうのも、いわゆる畑がばーっと広がる田舎って言うんじゃなくて、あくまでも身の周りに感じたローカル性を描いています。

畑の戦士たち, 2006

"畑の戦士たち", 2006 /
oil on canvas / 97.5x145.5cm
© Daisuke Fukunaga

Tough guys, 2008Tough guys, 2008local emotion, 2007-08

L to R: "Tough guys", 2008 / oil on canvas / 259.0 x 194.0cm、"日だまり a sunny place", 2008 / oil on canvas / 259.0 x 194.0cm
"back ground", 2008 / oil on canvas / 259.0 x 194.0 cm © Daisuke Fukunaga

この資材置き場の作品"Tough guys"ですが、手前にこう、ぐるぐる描かれているのは?

これは、鉄条網。そういうところって見たことないかもしれないですけど。

見たことはあるのですが、作品ではすごく生命力があるので、何か植物系のものなのかなと。この下にあるのは?

これは、コーンと、台風で飛ばされたような、骨の折れた傘です。

灯油がこぼれて、コーンも燃えているような連想をしました。虹色のようなところが、そういうイメージに思えます。

雨が降ったあとの、濡れたアスファルトに光が反射してぎらぎらした感じを出したかったんです。

色使いがすごくビビッドになってきていますね。色のこだわりみたいなものはあるんですか?

自分のアトリエの周りなどが工業地帯で、壁のペンキとか、トタンに塗ってある色なんかがカラフルなので。カラフルな色なんだけど、こう日焼けしちゃった感じとか、いい色だなあと。

どぎついんだけど、鮮やかにきれいというわけでもない。

そうですね。でも暗闇で街灯とかの照明に照らされた工業物はすごいビビットでドキッとしますね。

"back ground"は?

これも立て看板の裏側なんですけど、そうゆう所は大体ふき溜まってて、いろんなものが捨てられてるし、地形的にも不安定な場所に建てられていて気になるんですよ。

この看板は浮いているのですか?

これは柱で支えられてるんです。

その裏に木が生えているんですね。

その看板の後ろから、表のパチンコ屋の光とか、車の光がバーッと当たっているのが後ろに漏れてきていて、背後の世界が照らされているような感じです。

<モップのシリーズ>の絵も背景に光源があるような作品がいくつかありますね。

やっぱり、逆光なんですよ。逆光になんか、目が行くというか。

page| 1  2 >>

# page top