David Ratcliff

artist interview David Ratcliff

日本での初個展となるデイヴィッド・ラトクリフ。
オープニング当日、新作の話題を中心に、制作のプロセスについて語ってもらった。

インタビュー・訳 / 小山登美夫ギャラリー


最近の作品は、テープの剥がし忘れやペイントのし忘れなど偶然性を介入させることにより、絵画性が増してきている気がする。

どうやって作品に使うイメージを決めているのですか。

インターネットでキーワードを入れて、ヒットしたイメージをコンピューターでコラージュしています。例えば「The Elements」という作品ではcoffee table sculptureで検索しました。アップになっている顔のイメージの他に、3人の人物がいますが、実はこれ、全て同一の彫刻作品なのです。一つの彫刻を様々な角度から撮った写真を見つけて、面白かったので全部使ってみました。

あらかじめキーワードを決めて検索するのですか。

いや、特に具体的なキーワードは決めず、もっとランダムに検索することもあります。ネットサーフをする感覚です。

色はどのように選択しているのですか。

視覚的に直感で決めています。もっと簡単に言えば見た目ですね。フォトショップ上で色のテストをあれこれやってみて、最終的にビジュアルとして良かった色に決めています。

以前からこの方法で制作されていたのですか。

昔はコラージュの構図一つや仕上げの細部まで自分のイメージした通りになるようにかなり気を遣いながら制作していました。でも最近は、テープの剥がし忘れやペイントのし忘れなど偶然性を介入させることにより、作品に絵画性が増してきているような気がします。

「Figure in Ground」は、抽象的な要素とコミックみたいな要素が入り交じっているように思いますが。

そう。大部分は抽象画っぽいんだけど、この右下の人物がちょっと違う。この頃はボディー・ペイントに興味をもっていたのもあって。それで、ボディー・ペイントでネット検索してみたらこれが出てきたってわけです。実はこれはある人が酔っぱらって寝ている間に友達がその人のお尻に落書きをした画像で、お尻の割れ目がタバコを吸っているように見えるんです。(笑)

「Fort Bragg Calendar 1」はどういうコンセプトだったのですか。

作品中央の複雑な模様は、既存のデザインを引用しています。というのも、Fort Bragg(米ノースカロライナ州にある軍用基地)の兵士がカレンダーに絵を描いた画像をたまたま見つけたのが始まりです。すごくサイケデリックな模様ですよね。もともとデザインにも興味があり、個人的にはイラク戦争の影響でヒッピーによる戦争反対の理想像に再びスポットをあててみました。

「Shapes」はどうですか。

この作品に関しては、とにかく「浮かぶ」ものを探していた時期があって、いろいろ探しているうちに透明な物体に惹かれていき、最終的にプールのおもちゃに落ち着いたんです。だから全体として水を想起させる構図に仕上げようとしました。

この「Shapes」という作品は、他の作品と比べて非常に複合的ですね。つまり、複雑すぎて描いてあるものが、何かわからないような。

そうですね。かつての僕はイメージをつなぎ合わせるのに非常に神経を遣っていました。構図の一つ一つや、イメージとイメージの配置における関連・関係性など非常に神経を遣っていたんです。最近は、逆にイメージそのものの持つ意味や記号性を解体・破壊する作業のほうが面白く、単なる「形」として扱えるようになりました。
「Fort Bragg Calendar 1」も同じように、カレンダーの画像の他に、イラク駐屯に決まった米兵の出征を見送る妻たちの写真も含まれているのですが、作品を観るにあたって、鑑賞者に特別な政治的メッセージを伝えたいわけではありません。

インターネット時代についてどう思いますか? またインターネットに対するあなたの立ち位置はなんでしょうか。

インターネット時代、つまり「今」でしょう? 難しい質問ですね(笑)。インターネットはツールとして捉えています。世界中のあらゆるイメージを無尽蔵に収集するのにこれほど便利なツールはありませんからね。インターネットが無ければ、兵士が落書きしたカレンダーの画像なんて手に入ることもまず考えられないでしょう。
でも制作上使用するにあたって、インターネット自体にコンセプチュアルな意味合いを見出してもらおうとしているわけではありません。あくまでツールである、ということです。

個人的にすごく気になっているのですが…この赤い作品に出てくる動物は豚ですか。

あぁ、豚だよ。この元の画像はイギリスの田舎の畜産農業組合か何かのページからとってきたものです。「Pure Pigs」っていう文字も後付けしたわけでもなくて、最初からそう書いてあった(笑)。ピッタリだったのでそのまま作品のタイトルにもしました。

スプレーペイントという手法は、デジタルコラージュやステンシル作りにかかる作業時間と比べ、遥かに短く、一瞬の行為のように思えます。私がデイヴィットさんの作品を見て感じるのは、スプレーを使うことによって、逆に過程の緻密さや重要さがあぶり出されているかのように見えるのですが、制作の上で重要なのは過程なのでしょうか。

過程はあくまでも過程にすぎず、結果を出すために辿る道だと捉えています。確かに、結果を出すためには必要不可欠ですが、私にとって最も大事なのは仕上がりであり、結果なのです。結果が全てなのですよ。

デイヴィッド・ラトクリフ
プレスリリース
作家略歴

David Ratcliff [The Elements]2007

"The Elements", 2007
acrylic on canvas
152.4 x 182.9 cm
© David Ratcliff

David Ratcliff [Figure in Ground]2007

"Figure in Ground", 2007
acrylic on canvas
182.9 x 152.4 cm
© David Ratcliff

David Ratcliff [Fort Bragg Calendar1]2007

"Fort Bragg Calendar1", 2007
acrylic on canvas
162.6 x 127.0 cm
© David Ratcliff

David Ratcliff [Fort Bragg Calendar2]2007

"Fort Bragg Calendar2", 2007
acrylic on canvas
162.6 x 127.0 cm
© David Ratcliff

David Ratcliff [Shapes]2007

"Shapes", 2007
acrylic on canvas
213.4 x 157.5 cm
© David Ratcliff

David Ratcliff [Shapes]2007

"Pure Pigs", 2007
acrylic on canvas
152.4 x 127.0 cm
© David Ratcliff

# page top