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時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。この度1月27日から2月24日まで日高理恵子展を開催する運びとなりました。
日高理恵子は1958年、東京都生まれ。1983年、武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業。1985年、同大学院造形研究科美術専攻修了。現在、東京を拠点に制作活動を行っています。1995年から1年間、文化庁芸術家在外研修員としてドイツに滞在。以降、国立国際美術館での個展(98年、大阪)を始め、多くの展覧会に出展しています。小山登美夫ギャラリーでは、2000年、2002年に続き3度目の個展となります。近年では、「Rising Sun, Melting Moon」(イスラエル美術館、エルサレム、05年)「Chikaku - Time and Memory in Japan」展(クンストハウス・グラーツ、オーストリア、他巡回05-06年)に出展しました。
日高理恵子の絵画作品には一貫して、モノクロームの樹木が描かれています。枝々の先の先まで執拗に描き続けられるこれらの木々はしかし、あらゆる意味や感情を一切よせつけず、私たちが見知っている風景画としての木 - そのものの生命力、それが息づく風土、理想主義的な象徴、或は枯れ枝に宿る「老い」の象徴などーのどれにも当てはまることはありません。「見つめれば、見つめるほどに見えてくる測りしれない距離、この測りしれない距離・空間をリアルに感じ続けるために樹を見上げ、描く。そしてこの距離・空間から絵画の距離・空間を探りたい」という作家の言葉が示すとおり、今回ご紹介すると題されたシリーズは、まさに空間を感じるための展覧会です。
原野に屹立する樹林が地平線とともに描かれていた「水平の視点」の初期作品から、「私の眼はすでに画面を構成するすべての場所を同じ強度で見、同じ密度で描かずにはいられなかった」と日高は語ります。その後「見上げる視点」によって描かれた『樹を見上げて』では、自分自身をとりかこむ空間そのものを表現したい、という空間への意識が初めて生まれました。巡る季節を経て形を変えてゆく木々に向き合い続ける作家は、やがて同じ木を見ていても、枝は線的な空間に、葉は面的な空間に感じるようになります。個としての木を示すような木肌のニュアンスなどの写実的描写はそぎ落とされ、描かれた木が存在する場所の空気感に限らない、より匿名の場へと通じる空間が、次の『樹の空間から』に開けていきます。生い茂る葉の重なり合う様、或は葉をすっかり落とした枝々と空とのコントラストは、木の合間から窺える空の空間の存在を強く感じさせることになりました。画面の中の深度を得るため、より重層的な枝の重なり、近くに見えている枝から眼で見極められないくらい遠い枝葉までも画面として切り取ってきた日高は、いわゆる遠近法的な奥行き、空気遠近法的な描写とは違う、一枝を集中して見るとその枝がとても遠いようにも近いようにも見えてくるような、より見極められない距離感に魅力を感じ始めます。こうして2002年に『空との距離』の第1作目が生まれました。花芽をつけた木の表現はミニマルになり、続く2作目における葉の表現も細かな部分までくっきりと描かれるようになります。「見つづけるということは測りしれない存在を強く感じると同時に、現実的な形をより一層鮮明に見ることになる。この表裏一体の要素を見ること、描くこと、感じることによって越えていきたい。そして少しでもあの空の空間に近づきたい」という作家の欲求は、より具体的で克明な描写につながり、それでいてそこに表現されるのはより抽象的な、絵画空間としての広がりであったのです。
本展で出展される作品は、その『空との距離』の新作です。3点組の大作を含む新作ペインティング6点と、同じ構図によるドローイング6点を展示致します。樹を見上げ描くことによって、絵画の距離・空間を探る作家の新しい試みを、この機会に是非御高覧下さい。
プレス担当:大森智子 TEL:03-3642-4090 |
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