About the Exhibition

建築以前・建築以後 展

菊竹清訓 伊東豊雄 妹島和世 西沢立衛 妹島和世+西沢立衛/SANAA
キュレーション:鈴木布美子 会場設計:西沢立衛建築設計事務所
2009年8月1日(土) - 8月29日(土)
小山登美夫ギャラリー東京 7F, 6F
オープニングレセプション 8月1日(土) 6:00 - 8:00pm
*参加建築家による トーク・イベント » 詳細 (pdf 239KB)
  • 建築以前・建築以後 展 2009  菊竹清訓 伊東豊雄 妹島和世 西沢立衛 妹島和世+西沢立衛/SANAA
  • © Kiyonori Kikutake(photo / Osamu Murai), ©Toyo lto(photo / Tomio Ohashi),
    ©Kazuyo Sejima(photo / Kazuyo Sejima & Associates), ©Ryue Nishizawa(photo / Ken'ichi Suzuki), ©Kazuyo Sejima + Ryue Nishizawa / SANAA(photo / Ken'ichi Suzuki)

» 展覧会について

作品紹介とフロアーマップ (pdf 5.9MB)
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本展は、4人と1ユニット(菊竹清訓、伊東豊雄、妹島和世、西沢立衛、SANAA)の日本人建築家が作成したドローイングや模型を中心とした展覧会です。展示作品の大部分はアンビルドもしくは現在進行中のプロジェクトに関するものになっています。建築家が設計作業の過程で作るドローイングや模型は、まだ実在しない建物や空間のリアリティを仮想的に構築するものであり、その意味で〈未だ建築にならざるもの〉だと言えます。本展はこの〈未だ建築にならざるもの〉が持つ表象としての可能性と多様な展開を追うものです。

菊竹清訓は1950年代から現在まで続く海上都市のコンセプト・スケッチと模型を展示します。菊竹は【海上に浮かぶ都市】という建築の通念を超えたコンセプトを、その各時代から未来へと照射されたテクノロジーの臨界点で実現し、人間環境の未来を探り続けてきました。本展ではその出発点である「海上都市1958」から1993年の「海上リニア都市」までのドローイングを中心に、ひとりの建築家の想像力の変遷を検証します。
伊東豊雄は今春行われたノルウェー・オスロ市の「ダイクマン中央図書館」の設計コンペ案に関する模型とドローイングを展示します。伊東の設計プロセスは極めて集団的です。彼がコンセプトの核となる言葉を提示し、そこから集団的な検討作業を通じて、見えないかたちへの方向性を模索していきます。その過程は実に刺激的です。伊東の手によるスケッチやメモの数々は、その海図なき航海を目的地へと導く役割を果たしています。
妹島和世は現在、岡山県の犬島で進行中の「犬島アートプロジェクト」の模型を、西沢立衛は都内で進行中の「ガーデンアンドハウス」と香川県の豊島に建設が予定されている美術館「t-project」の模型を、そして妹島和世と西沢立衛によるSANAAは、スイスで建設中の「スイス連邦工科大学ローザンヌ校ロレックス・ラーニング・センター」の模型をそれぞれ展示します。彼らは設計作業のなかで、言語化や概念化が不可能な空間のバリエーションを精査するために膨大な量のスタディ模型を作成します。模型は設計プロセスの物資的ドキュメントであると同時に、絶えず変成し続ける生命体のような魅力を放っています。

世代の異なる4人の建築家は戦後日本の建築界においてひとつの系譜を形作っています。本展は約50年のタイムスパンのなかでこの系譜を再検証する試みにもなっています。国際的に高い評価を得ている建築家たちが生み出した、現実の建築物とは別の世界の豊かな広がりを、ぜひこの機会にご高覧下さい。

» 作家プロフィール

菊竹清訓 (きくたけ きよのり) 建築家
1928年福岡県生まれ。50年早稲田大学卒業。53年菊竹清訓建築設計事務所設立。日本建築士会連合会名誉会長、日本建築家協会名誉会員、アメリカ建築家協会特別名誉会員、国際建築アカデミー理事、フランス建築アカデミー会員、などを務める。主な作品に、スカイハウス、出雲大社庁の舎(島根)、ホテル東光園(鳥取)、沖縄国際海洋博「アクアポリス」、東京都江戸東京博物館、北九州メディアドーム(福岡)、九州国立博物館(福岡)などがある。芸術選奨文部大臣賞、日本建築学会賞、オーギュスト・ペレー賞、毎日芸術賞、IAAクリスタルグローブ大賞、早稲田大学芸術功労者賞、日本建築栄誉賞など受賞。現在、パラダイス・リビング集合住宅(モスクワ)、リパブリック・ビジネス・センター(アスタナ、カザフスタン)、台北南港集合住宅計画監修(台湾)などが進行中である。

伊東豊雄 (いとう とよお) 建築家
1941年京城(現ソウル)生まれ。65年東京大学工学部建築学科卒業。菊竹清訓建築設計事務所を経て、71年アーバンロボット設立。79年伊東豊雄建築設計事務所に改称。主な作品に、せんだいメディアテーク(宮城)、まつもと市民芸術館(長野)、TOD'S表参道ビル(東京)、瞑想の森市営斎場(岐阜)、コニャック・ジェイ病院(パリ)、多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)、座・高円寺(東京)、2009高雄ワールドゲームズメインスタジアム(台湾)などがある。日本建築学会賞、芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、2008年度第6回オーストリア・フレデリック・キースラー建築芸術賞など受賞。現在、バルセロナ見本市 グランヴィア会場拡張計画(スペイン)、台中メトロポリタンオペラハウス(台湾)、カリフォルニア大学 バークレー校美術館/パシフィック・フィルム・アーカイブ(カリフォルニア)などが進行中である。

妹島和世 (せじま かずよ) 建築家
1956年茨城県生まれ。81年日本女子大学大学院修了。伊東豊雄建築設計事務所を経て、87年妹島和世建築設計事務所設立。95年西沢立衛と共にSANAA 設立。主な作品に、再春館製薬女子寮(熊本)、hhstyle.com(東京)、梅林の家(東京)、鬼石多目的ホール(群馬)、大倉山の集合住宅(神奈川)などがある。日本建築大賞、芸術選奨文部科学大臣賞美術部門、王立英国建築家協会(RIBA)インターナショナル・フェローシップ、ステラ・レ賞(StellaRe Prize、イタリア)、エルナ・ハンバーガー賞(Erna Hamburger Prize、スイス)など受賞。現在、花園(台湾)、日立駅自由通路及び橋上駅舎デザイン監修(茨城)、豊田市生涯学習センター逢妻交流館(愛知)、犬島アートプロジェクト (岡山)などが進行中である。

西沢立衛 (にしざわ りゅうえ) 建築家
1966年東京都生まれ。90年横浜国立大学大学院修士課程修了。妹島和世建築設計事務所を経て、95年妹島和世と共にSANAA 設立。97年西沢立衛建築設計事務所設立。主な作品にウィークエンドハウス、森山邸、十和田市現代美術館(青森)などがある。第15回吉岡賞、東京都建築士会住宅建築賞金賞、平成17年度文部科学省若手科学者賞など受賞。現在、ニューヨークのヴィラ、熊本駅東口駅前広場、軽井沢研究所(長野)、t-project(香川)、ガーデンアンドハウス(東京)などが進行中である。
作家サイト:西沢立衛建築設計事務所

SANAA
95年、妹島和世と西沢立衛とで設立された建築ユニット。主な作品に、国際情報科学芸術アカデミーマルチメディア工房(岐阜)、ヴェネチア・ビエンナーレ第7回国際建築展 日本館『少女都市』会場構成、ISSEY MIYAKE BY NAOKI TAKIZAWA(2007、東京)、ディオール表参道(東京)、金沢21世紀美術館、トレド美術館ガラスパビリオン(オハイオ、アメリカ)、ノバルティス製薬オフィスビル(バーゼル、スイス)、直島町海の駅(香川)、ニューミュージアム(ニューヨーク)、サーペ ンタインギャラリーパビリオン2009(ロンドン)などがある。
日本建築学会賞、アーノルド・ブルナー記念建築賞、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、ザルツブルグ建築賞V.スカモッツィ賞、第46回 毎日芸術賞建築部門、マリオ・パニ賞(Premo Mario Pani、メキシコ)、ベルリン美術賞など受賞。現在、ROLEXラーニングセンター(ローザンヌ、スイス)、ルーブル・ランス(ランス、フランス)、ヴィトラ・ファクトリー(ドイツ)、パリ十六区公営集合住宅(パリ、フランス)などが進行中である。
作家サイト:Kazuyo Sejima + Ryue Nishizawa / SANAA

ステートメント:空間の表象をこえて
キュレーター : 鈴木布美子

イタリア・ルネサンス期において「建築家」という職能が建設業から独立したとき、その建築家に求められるスキルとは何よりもまずドローイングの能力であった。以後、近年になってコンピュータグラフィックスの利用が一般化するまで、ドローイングは建築と不可分のものとの考えられてきた。

今日、建築家が自らの観念を伝達するメディウムはより多様化している。設計過程ではドローイングのみならず、言語、模型、CG(動画を含む)などが幅広く用いられている。建築は多様なコンテクストのなかで空間を生産することだが、建築家は直接的にその空間を生産することができない。そのためそうした〈未だ建築にならざるもの〉の作成、変形、破棄/再構築を通じて、仮想的に空間を作り上げていく。現実の建築が外的諸条件との妥協の産物であるとするならば、模型やドローイングといった「空間の表象」(アンリ・ルフェーヴル)は、建築家の脳裏に宿った思考に最も近い形象といえる。

「空間の表象は、実質的な役割を持ち、空間の生産において特殊な影響力をもつにちがいない。空間の表象の影響力はいかにして発揮されるのか。それは建設によって、つまり建築によって、である」
(「空間の生産」アンリ・ルフェーヴル)

確かに模型やドローイングはある空間の理念を表象化したものであり、その空間の実現を志向している。例えば建築展という制度化された場では、それらの「空間の表象」はそうしたものとして展示され、理解される。しかしドローイングや模型は無色透明なメディウムではない。そこには固有の表現力があり、文体や修辞を伴った言説の一種であると言うこともできる。同時にそれらは、思考の生成と不可分に結びついている。ドローイングや模型は単なる観念の写しではなく、それ自身が別種の創造なのだ。建築家は描きながら(模型を作りながら)、何かを発見し、自らが何について思考しているかを理解する。特にスタディ過程で作られる模型やドローイングには、ずれや切断、言い直しといった痕跡を認めることができる。本展の狙いのひとつは、そうした多面性を持った「もの」の現れ方や振る舞いを顕在化させることにある。

今回取り上げた4人と1ユニットの建築家は、戦後日本の建築史においてひとつの系譜を成している。菊竹清訓に始まり、伊東豊雄を経て、妹島和世、西沢立衛へと至る流れ。そこには、先端的な構造テクノロジーとの協働で新しい建築のリアリティを構築しようとする意志が強く感じられる。もちろんそのリアリティのあり方は世代や建築家によって大きく異なる。例えば菊竹清訓の場合は、構造などの技術は明確に可視化され、合理性や社会的な計画性に力点が置かれる。それは彼がモダニストの建築家として自己形成を遂げたことと深く関連している。いっぽう「せんだいメディアテーク」以降の伊東豊雄は、構造解析技術の飛躍的進歩がもたらした成果を踏まえ、モダニズムとは異なる表現主義的な方向に新しいリアリティを求めている。彼がそこで実現しようとしているのは、人々がより自由に振る舞える空間だ。そしてSANAAの場合は、あたかも構造が存在しないかのように見える物資的な希薄さや透明性を実現するために、高度な構造テクノロジーが投入されている。それは、模型が持つ軽さや儚さの感覚をそのまま現実のスケールへと持ち込んだもののようだ。彼らがその先に見ているのは、建築がさまざまな人間の営みと完全に解け合い、もはや建築という領域が明確に固定化されない状態なのかもしれない。

そうしたスタンスの違いはあるものの、彼らの建築はそれぞれの回路を通じて、新たな社会性の実現を目指している。もちろん、未来都市然とした海上都市の必要性をロジカルに説く菊竹の言説と「今よりももう少し、回りの人たちと触れ合うような生活ができる建築にしたい」というSANAAの言説には大きな隔たりがある。しかし建築を通じて今までとは違った社会生活のあり方を提案するという姿勢では、共通するものがある。その意味で〈未だ建築にならざるもの〉は、実作としての建築の向こう、〈建築の先にあるもの〉をも示しうるものとなる。

空間こそが建築の最も純粋な属性であるという認識はモダニズム以降急速に一般化した。しかしすでに現在、空間という概念は建築家の専有物ではなくなっている。アート、建築、デザインなどの脱領域的な創造活動が常態化するなかで、建築家たちが長年に渡って培ってきた表象の技法を、それとは別の枠組みから眺めてみること。そこからは、新しい空間表現の可能性が見えてくるはずだ。

空間の表象をこえて
キュレーター : 鈴木布美子

参考文献

「空間の生産」 アンリ・ルフェーヴル 斎藤日出治訳 青木書店
「言葉と建築/語彙体系としてのモダニズム」 エイドリアン・フォーティー 坂牛卓+邉見浩久監訳 鹿島出版会
「融合する建築、アート、デザイン」 長谷川祐子+五十嵐太郎 「新世代建築家・デザイナー100」エクスナレッジ

お問い合わせ先:

[ 小山登美夫ギャラリー ] プレス担当:大森智子 TEL:03-3642-4090

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